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論文記事:医療観察法対象者の地域ケアにおける保健所の支援実態 201607-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第63巻第7号 2016年7月

医療観察法対象者の地域ケアにおける保健所の支援実態

-司法精神医療機関と行政機関の連携の課題-
原田 小夜(ハラダ サヨ) 辻本 哲士(ツジモト テツシ)
角野 文彦(カクノ フミヒコ) 中原 由美(ナカハラ ユミ)

目的 医療観察法施行から10年が経過し,地域処遇の事例が増加している。本研究は,保健所の医療観察法対象者(以下,法対象者)の支援の実態から司法精神医療機関と行政機関との連携に関する課題を検討した。

方法 全国の保健所に対し,自記式質問紙法による郵送調査を平成25年10月に実施した。調査内容は,保健所の法対象者の支援経験,共通評価項目の知識と活用,地域支援に関する課題25項目とし,記述統計を実施し,法対象者の有無による比較,指定医療機関の有無による比較にはχ2検定を実施した(有意水準5%)。

結果 回答数は311(回収率63.0%)のうち,指定入院医療機関有は14.0%,指定通院医療機関有は43.3%であった。支援経験有76.8%,事例数は1,124件,平均支援数は3.6,指定入院機関有で6.7,指定通院医療機関有で4.5,無し1.9であった。共通評価項目のカンファレンス使用は14.6%,情報提供が必要との回答が70%を超えた項目は「幻覚・妄想等の精神症状」「病識の有無」「非社会性」であった。法対象者に「特別な対応が必要」55.8%,支援に対する「不安がある」65.3%であった。地域支援に関する課題では,「法処遇終了後の対応,支援体制に不安がある」「保健所のマンパワーが不足し,きめ細やかな対応は難しい」「被害者支援,同じ町で生活するにあたって,被害者への配慮がいる」「処遇困難な事例に対する丁寧な関わりをするには時間がない」で課題有が70%を超えた。支援経験有の保健所の指定入院医療機関有,指定通院医療機関有,指定医療機関無しの3群比較では,「発達障害,アルコール等,統合失調症以外の対象者の処遇が難しい」「指定通院医療機関が遠いので,治療を中断する心配がある」「ホームヘルパーにとって法対象者のケアは難しい」「サービス決定をする行政機関と退院後の居住地が異なるとタイムリーに対応できない」で,課題有の割合は指定医療機関無しが最も高く,指定通院医療機関有,指定入院医療機関有の順であった。「家族支援について,法以外のケースと異なり,対応方法がわからない」は,課題有の割合は指定医療機関無し,指定入院医療機関有,指定通院医療機関有の順で高かった。

結論 保健所の支援事例数が増加し,法処遇終了後の支援体制に不安を持っている。指定医療機関の無い保健所における処遇困難事例に対する対応,法対象者の治療中断や指定医療機関とのタイムリーな連携の課題が大きい。法処遇終了後の継続した支援体制づくりが重要である。

キーワード 医療観察法,保健所,指定医療機関,地域処遇,連携,共通評価項目