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論文記事:生活習慣と医療費支出との関連 201702-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第64巻第2号 2017年2月

生活習慣と医療費支出との関連

-4年間のパネル調査分析から-
相原 洋子(アイハラ ヨウコ) 川副 延生(カワゾエ ノブオ)

目的 生活習慣病は国民総医療費の約3割を占めることが報告されており,医療費の適正化に向けて健康行動を促進することは,公衆衛生上の課題である。栄養状態や喫煙,飲酒習慣などの実態は年齢や性別により異なっており,保健指導を実施していくうえで,年齢や性別によってどのような生活習慣の改善を図るかを検討することは重要と考え,年齢,性別による生活習慣病リスクと医療費支出との関連を検証した。

方法 2009~2012年に実施された日本家計パネル調査の個票データを用いた。生活保護受給世帯,2012年時の年齢が71歳以上となる人を除外し,4年間追跡ができた3,802人のデータを分析対象とした。アウトカムは調査前年の1年間の医療費支出とし,生活習慣病リスクとして喫煙習慣,飲酒習慣,体格指数,平日の睡眠時間とした。調査時年齢,等価可処分所得,教育歴,就労,婚姻,心身症状を調整変数とし,男女および年齢区分別に層化し,ガンマ分布を仮定した一般化線形混合モデルを用いて,生活習慣による医療費支出の相対危険度を算出した。

結果 調査初年度の年間医療費支出の平均額は約4万円であり,年齢が高くなるほど医療費支出額,通院・入院した割合は高くなる傾向にあった。40歳代女性以外の年代の男女において,「たばこをやめた」人は「吸わない」人より医療費支出が高く,50歳代男性ではその関連性が有意であった。体格指数が25.0以上の人は,18.5~24.9の人と比べて医療費支出が高くなる傾向にあり,医療費支出の比が最も高かったのは男女ともに40歳代であった。一方,40歳未満の女性では,体格指数18.5未満の人の医療費支出は,標準体重の人よりも高かった。40歳未満の女性では飲酒習慣がある人は,ない人よりも医療費支出が低い傾向がみられた。睡眠時間と医療費支出との関連について統計学的に有意な差はみられなかった。

結論 「喫煙習慣があった」「やせ」「肥満」の人は,そうでない人と比べて医療費支出額が高く,その関連性は性別,年齢によって異なっていた。喫煙対策や適性体重の推進は,医療費抑制の点からも重要であり,疾病に罹患する前に生活習慣の見直しを図れるような保健指導の在り方が今後求められる。

キーワード 医療費支出,生活習慣,日本家計調査,パネルデータ,保健指導

 

 

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