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論文記事:東日本大震災被災者における震災後4年間の自覚症状有訴者率変化と関連因子の検討 201704-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第64巻第4号 2017年4月

東日本大震災被災者における震災後4年間の
自覚症状有訴者率変化と関連因子の検討

-地域包括支援センターへの全国調査の二次分析-
関口 拓矢(セキグチ タクヤ) 菅原 由美(スガワラ ユミ) 渡邉 崇(ワタナベ タカシ)
遠又 靖丈(トオマタ ヤスタケ) 丹治 史也(タンジ フミヤ) 萩原 嘉廣(ハギワラ ヨシヒロ)
矢部 裕(ヤベ ユタカ) 井樋 栄二(イトイ エイジ) 辻 一郎(ツジ イチロウ)

目的 大規模災害後の被災者の慢性期・復興期における健康問題については今だ明らかでない点が多い。本研究の目的は,東日本大震災被災者の自覚症状有訴者率(以下,有訴者率)の変化を明らかにすることと,有訴者率の増加がみられる自覚症状の新規発生に関与する因子を検討することである。

方法 東北大学地域保健支援センターでは被災者の長期にわたる健康状態を把握するため,健康調査を半年ごとに継続実施している。本研究は被災地域である宮城県内4地区の18歳以上住民のうち,震災約半年後(2011年6月~11月)に行われた第1期調査および4年半後(2015年6,7月)に行われた第9期調査に回答かつ研究同意した者を対象とした。自覚症状の項目は国民生活基礎調査に準拠し,ここ数日における病気やけがなどで体の具合が悪いところに当てはまるものすべてを選択するよう依頼した。第1期,第9期それぞれで,自覚症状の項目ごとに千人当たりの有訴者率を算出した。有訴者率の推移は,McNemar検定により解析した。さらに,有訴者率が有意に増加した自覚症状について新規発生と関連する因子を多重ロジスティック回帰分析を用いて解析した。検討項目は,人口統計的特性(性別,年齢),生活・健康習慣(飲酒習慣,喫煙習慣,歩行習慣),社会経済的因子(震災前からの就労変化,主観的経済状況,居住環境,社会的孤立),心理的因子(心理的苦痛,睡眠障害の疑い)とした。

結果 解析対象者は1,239名であった(平均62.6歳,女性55.6%)。第1期から第9期にかけ有訴者率が有意に減少したものは(第1期,第9期;相対有訴者率比),「いらいらしやすい(118.6,87.2;0.73倍)」「めまい(76.7,54.1;0.71倍)」であった。一方,「腰痛(222.8,286.5;1.29倍)」「尿失禁(尿が漏れる)(32.3,54.1;1.68倍)」は有意に増加した。腰痛の新規発生には,1日2合以上の飲酒習慣(オッズ比2.05,95%信頼区間1.25-3.38)と主観的経済的状況が大変苦しいこと(オッズ比2.28,95%信頼区間1.38-3.76)が関与していた。尿失禁新規発生には高齢(1歳増加あたり,オッズ比1.07,95%信頼区間1.04-1.11)が有意に関連していた。

結論 被災地域住民では,震災半年後と比較して,震災4年半後にいらいら,めまいは減少した一方で,腰痛と尿失禁は増加した。腰痛の新規発生には震災後の生活習慣や社会的要因が関与している可能性がある。

キーワード 東日本大震災,自覚症状有訴者率,被災者,健康,予測因子