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論文記事:障害福祉制度へのつながりにくさに関する一考察 201803-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第65巻第3号 2018年3月

障害福祉制度へのつながりにくさに関する一考察

-北海道内ホームレス支援施設利用者調査結果の分析から-
山口 大輔(ヤマグチ ダイスケ)

目的 本研究の目的は,北海道内のホームレス支援施設利用者の障害者手帳の取得状況と支援課題の関連について検討し,利用者の障害福祉制度へのつながりにくさについて考察することである。

方法 調査は,北海道内の7カ所のホームレス支援施設を対象として,ホームレス支援施設で利用者支援に従事している支援者に利用者個々の情報を記載する転記票調査を実施した。転記の範囲は「2015年6月30日」に施設を利用していた利用者全員とした。調査項目は,基本属性,入所直前の生活場所,入所につなげた人や機関,障害者手帳の取得状況(手帳の取得時期と障害の疑いの有無),支援課題などである。

結果 分析の視点として,利用者の障害者手帳の取得状況に着目し,①「入所前」に障害者手帳を取得した事例,②「入所後」に障害者手帳を取得した事例,③障害の「疑いあり」の事例の三つに区分した上で,支援課題との関連について検討した。その結果,上記の三つのタイプに共通しているのは,支援課題として「日常生活支援」の必要性と同時に,「障害福祉の支援拒否への対応」という要因が見いだされた。そのなかで,障害者手帳の取得にまでつながっていかない事例と手帳取得につながり,制度につながったとしても,一時的なものであり,制度利用をして支援を受け続けるという状態が「長続きしない」という事例が明らかとなった。さらに,その背景には,利用者の「精神的な不安定さ」「対人関係の困難さ」という要因が影響していたと考えられる。

結論 障害のある人に対して障害者手帳の取得,つまり障害認定の申請につなげて,障害福祉制度・サービスを利用するという支援が一般的な考え方ではあるが,困難や不利が複雑化している利用者にとっては,制度がうまくつながっていかない現状が示されたといえる。障害があるため,フォーマルな制度である障害福祉制度へつなげるという支援の方法では,背景が複雑である生活困窮者に対する支援の方法としては狭い捉え方であり,インフォーマルな支援の構築という視点に基づいたきめ細かい支援対応が必要になると考えられる。

キーワード ホームレス支援施設利用者,障害者手帳,障害福祉制度,支援課題,生活困窮者

 

 

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