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論文記事:わが国におけるICD-11フィールドトライアル 201908-06 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第66巻第8号 2019年8月

わが国におけるICD-11フィールドトライアル

-診断用語コーディングの分野別解析-
佐藤 洋子(サトウ ヨウコ) 水島 洋(ミズシマ ヒロシ)

目的 ICD-11(国際疾病分類第11版)が10年以上の改訂作業を経て,2018年に公表された。ICD-11の適用性,信頼性,有用性などを検討するICD-11フィールドトライアルは,ICD-11改訂プロセスの最終段階に位置づけられ,WHOが主導となり国際的に共通のプロトコールとプラットフォームが提供された。わが国のICD-11フィールドトライアルは2017年に実施され,評価者として診療情報管理士378名が参加した。ICD-11フィールドトライアルでは,診断用語とケースサマリーが提供された。本研究では診断用語コーディングにおける分野ごとの解析を行い,分野ごとの特徴・課題を踏まえ,ICD-11のわが国への導入に向けた提言を試みた。

方法 評価者はICD-10とICD-11でそれぞれコーディングしたのち,難しかったか(「はい」「いいえ」),コードの詳細さ(「ちょうどいい」「詳細すぎる」「十分でない」),コードのあいまいさ(「いいえ」「はい」)について評価した。コーディング時間は自動記録された。各評価項目について,分野ごとのICD-10/11比較と,ICD-10およびICD-11での分野間比較を行った。ICD-10/11比較分析には,マクネマー検定およびウィルコクソンの符号付き順位検定を,分野間比較分析にはボンフェローニ補正をした正規近似による比率の差の検定およびウィルコクソンの符号付き順位検定を行った。

結果 評価者378名のうち,診断用語コーディング全症例の評価を終えたのは83名(22.0%)で,合計の回答数は38,654件だった。診断用語は22分野に分けられた。「難しかった」と答えた割合をICD-11とICD-10で比較したところ,19分野ではICD-11の割合の方が高かった(p≦0.035)。詳細さが「ちょうどいい」と答えた割合のICD-10/11比較においては,13分野でICD-10の値が高かった(p≦0.044)。一方で,「04免疫機構の障害」と「07睡眠・覚醒障害」はICD-11の割合が高かった(p<0.001,p=0.038)。詳細さが「あいまいである」と答えた割合のICD-10/11比較においては,18分野でICD-11の値が高かった(p≦0.006)。

結論 コーディングの難しさ,コードの詳細さ,コードのあいまいさをICD-11/10で比較したところ,総じてICD-10の評価が高い結果となった。理由としては,ICD-11に関する事前の教育不足や英語環境下での評価であったことが大きく影響したと考えられた。しかし新しく追加された免疫疾患や睡眠・覚醒障害の章では,ICD-11の評価が良好だった。ICD-11は2022年に発効予定であり,わが国で今後予定されているICD-11の日本語翻訳作業に並行し,わが国の医療・診療体制に即した独自のプロトコールによる導入のためのフィールドトライアルを行う必要がある。

キーワード ICD-11,国際疾病分類,フィールドトライアル,診療情報管理士,診断用語コーディング,情報共有

 

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