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論文記事:運動・スポーツ施設の開設が近隣地区の身体活動と身体活動促進要因へ及ぼす影響 201912-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第66巻第15号 2019年12月

運動・スポーツ施設の開設が近隣地区の
身体活動と身体活動促進要因へ及ぼす影響

-健康づくりの長期的調査結果からの検討-
久保田 晃生(クボタ アキオ) 松下 宗洋(マツシタ ムネヒロ)
荒尾 孝(アラオ タカシ) 杉山 岳巳(スギヤマ タケミ)

目的 気軽に運動・スポーツを開始できる運動・スポーツ施設やレクリエーション施設は,住民の身体活動に影響を及ぼす可能性がある。そこで,本研究では新たな運動・スポーツ施設の開設が,近隣住民の身体活動と身体活動促進要因へ及ぼす影響を健康づくりの長期的調査結果から施設の利用を促進するための施策の認知や利用の状況も合わせて把握し,検討することを目的とした。

方法 静岡県長泉町民対象の健康づくりの調査結果を分析した。調査対象者は静岡県長泉町在住の30歳から75歳で,住民基本台帳を基に各調査年(2013,2014,2015,2017年)3,200名が無作為抽出され質問紙調査が実施された。調査項目は,基本属性(年齢,性,ほか),身体活動(歩行頻度,運動習慣),身体活動促進要因(運動・スポーツ環境の認知,運動・スポーツ実践者の認知,運動・スポーツ実践の意欲),開設された多目的運動施設と施設の利用を促進するための施策である健康マイレージの認知と利用の状況であった。分析は郵便番号から多目的運動施設に近い近隣地区と遠い非近隣地区に分け,各調査年の調査項目の変化を把握するとともに,長期的な変化について一般化線形モデルを用い検討した。

結果 分析対象者は,2013年が近隣地区706人,非近隣地区308人,2014年が近隣地区738人,非近隣地区315人,2015年が近隣地区864人,非近隣地区312人,2017年が近隣地区879人,非近隣地区363人であった。基本属性はいずれも両地区で統計的な有意差は認められなかった。歩行頻度,運動習慣,運動・スポーツ環境の認知,運動・スポーツ実践者の認知,運動・スポーツ実践の意欲は経年的に多少の変化があったものの,長期的な変化の検討では有意差はなかった。多目的運動施設の認知は両地区とも90%以上であったが,利用は50%以下で非近隣地区は近隣地区より低い傾向であった。また,健康マイレージの認知は両地区とも約30%で,利用は5%以下であった。

結論 本研究の結果,新しい多目的運動施設が開設されても,近隣地区の住民の身体活動は向上しなかった。運動・スポーツ実践の意欲は,既に住民の8割以上にあることから,多目的運動施設の利用や実際の運動・スポーツ実践といった行動変容へとつなげる仕組みや支援を増やすことが,地域の身体活動を促進する上で重要なことかもしれない。

キーワード 身体活動,運動習慣,運動・スポーツ施設,生活環境

 

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