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論文記事:女子高校生の子宮頸がん予防ワクチン接種行動に関する心理社会的要因 201509-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第62巻第11号 2015年9月

女子高校生の子宮頸がん予防ワクチン接種行動に関する心理社会的要因

-修正版HBMに基づくパス解析による検討-
小林 優子(コバヤシ ユウコ) 朝倉 隆司(アサクラ タカシ)

目的 女子高校生の子宮頸がん予防接種行動を予測するHBM(Health Belief Model)の心理社会的な構成要因を測定する尺度開発を行い,その上でそれらを組み入れたHBMに基づいたパスモデルを用いて接種行動のメカニズムを明らかにすることを目的とした。

方法 神奈川県内の女子高校生1~3年生を対象に自記式質問紙調査を行った。因子分析の対象は項目に欠損値のない1~3年生2,463名であり,パス解析の対象は子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の対象学年であった1~2年生1,606名に限定した。子宮頸がん・予防接種に対する態度32項目に対し探索的因子分析を行い,8因子を抽出した。その後,確認的因子分析により8因子モデルの妥当性,各因子の構成概念妥当性を検討した。8因子および家族背景などの変数を用いて,まずHBMに基づくパスモデルを統計ソフトM-plusにより構築した。次いで思春期の保健行動を説明するためには,この時期に特徴的な要因である「調整力」が重要であると判断したため,「接種に向けた調整力」を加えてHBMに修正を加えたパスモデルを解析した。

結果 子宮頸がん・予防接種に対する態度としては,「家族の健康意識」「ワクチン接種の話題との接触」「接種に向けた調整力」「子宮頸がんの脅威」「ワクチン接種への肯定感と関心の高さ」「ワクチン接種への消極的態度・困難感」「ワクチンに対する不安」「ワクチン接種の時間と費用のバリア」の8因子が抽出された。HBMに基づく解析の結果,HBMの仮定どおりワクチン接種へのバリアが高いほどワクチン非接種の確率が高く,逆にワクチン接種への肯定感が高いほどワクチン接種の確率が高かった。そして,HBMの理論に反し「子宮頸がんの脅威」はワクチン接種を抑制していた。また,「ワクチンに対する不安」を説明する要因は特定できなかった。そこで,「接種に向けた調整力」を組み込んだ修正版HBMでは,HBMで特定されなかった「ワクチンに対する不安」の要因が明確になった。「子宮頸がんの脅威」は,直接的に接種行動を抑制する関連にあるが,「接種に向けた調整力」が媒介変数となり間接的に接種行動を促進するパスもあり,抑制と促進の両方の関連が明らかになった。なお,接種行動の説明率は25.2%から26.0%と「接種に向けた調整力」を加えたことによる大きな改善はみられなかった。

結論 オリジナルHBMに「接種に向けた調整力」を追加したことにより,女子高校生のワクチン接種行動をより明確に説明することができた。

キーワード 女子高校生,子宮頸がん予防ワクチン,接種行動,HBM,自律性

 

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