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論文記事:ユニット型介護老人福祉施設における共同生活室の利用状況と関連要因の分析 201509-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第62巻第11号 2015年9月

ユニット型介護老人福祉施設における
共同生活室の利用状況と関連要因の分析

石橋 洋次郎(イシバシ ヨウジロウ) 石井 敏(イシイ サトシ) 三浦 研(ミウラ ケン)

目的 ユニット型の介護老人福祉施設(以下,ユニット型特養)における共同生活室の利用割合の関連要因を把握し,施設の設備等の状況と利用割合との関連性を明らかにするとともに,個別ケアがやりやすい環境について考察する。

方法 平成25年度に実施した「ユニット型施設の生活空間等の状況および運営等のコストに関する調査」の入居者単位のデータ(胃ろうの有無,QOL等)に,施設単位のデータ(設備等の状況)を結合したデータ13,167件を分析対象とした。最初に,χ2検定,t検定,Cochran-Armitage傾向検定による関連性の評価を行い,共同生活室の利用割合の関連要因を抽出した。次に,関連要因間の相関係数を算出して変数を整理して,説明変数を選定した。最後に,高頻度で共同生活室を利用しているか否かを被説明変数として,ロジスティック回帰分析を行った。

結果 ユニット型特養の入居者の87%が,食事の時に「毎日毎食」共同生活室を利用していた。胃ろうで栄養摂取している入居者に限れば,「毎日毎食」の利用は17%であった。検定の結果,胃ろう以外にも,QOLスコア,喀痰吸引等が関連していたが,性(男女)および年齢との関連は認められなかった。また,設備等に関する要因としては,『居室内にトイレが設置されている』等の4項目が関連していたが,他の10項目は関連していなかった。要因間の相関は,例えば『胃ろう・腸ろう等』と『喀痰吸引』との相関係数は0.76となり,強い相関関係がみられたので,利用割合との関連が強い『胃ろう・腸ろう等』で代表させた。ロジスティック回帰分析の結果,食事時の共同生活室の利用割合は,入居者の状態との関連が強く,胃ろうの有無が最も影響する要因であった。一方,利用割合との関連が認められた4つの設備等の状況の影響は相対的に小さく,いずれも利用割合を下げる要因となっていた。

結論 入居者の重度化あるいは医療必要度の増大は,共同生活室の利用を減らす要因であったが,要介護4の89%,要介護5の73%が実際に「毎日毎食」利用しており,重度者の多くが共同生活室を利用していることが確認できた。また,『入口に玄関があり,ユニット内外が明確になっている』等の4項目の設備等の状況下では,同程度の状態像の入居者に対して,食事の場所の選択がより個別的になされているものと考えられる。個別ケアがやりやすい環境を検討する際に考慮すべきである。

キーワード ユニット型,介護老人福祉施設,共同生活室,QOL,ロジスティック回帰,個別ケア

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