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論文記事:里親委託等を推進するための指標の在り方に関する考察 202001-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第67巻第1号 2020年1月

里親委託等を推進するための指標の在り方に関する考察

平林 浩一(ヒラバヤシ ヒロカズ)

目的 社会的養護を必要とする児童の養育について,平成28年の児童福祉法改正では,原則として里親や養子縁組といった家庭養護を優先して推進することとした。しかし,里親委託等の推進に係る現行指標である「里親等委託率」の定義(算出方法)には課題があり,養子縁組の成立が里親等委託率を低下させる要因となっている。本研究では,各都道府県の乳児院・児童養護施設の定員と里親委託等の状況を比較・分析し,その上で,特別養子縁組等に係る児童福祉法改正や民法改正の方向性を踏まえながら,里親委託等を推進するための指標(数値目標)の在り方について考察した。

方法 平成28年度「福祉行政報告例」のうち,乳児院・児童養護施設の定員・入所児童数,里親・ファミリーホームに委託されている児童数,里親数の統計データを用いて里親委託等の状況の比較・分析を行った。次に,各年度の「福祉行政報告例」のうち,里親委託解除理由の統計データにより,里親委託解除から養子縁組となった児童の状況等をみるとともに,現行指標の定義を見直し,里親委託等と養子縁組の両制度の成果を一つの指標とした場合について試算を行った。

結果 都道府県別の「乳児院・児童養護施設定員の要保護児童数に対する割合」と「里親等委託率」との相関をみると,施設定員が要保護児童数に比べて多い都道府県ほど,里親等委託率は低くなる傾向にある。また,指標の定義を見直し,現行の里親等委託率を構成する数値に,養子縁組成立により里親委託解除となった児童数を加え,里親委託等と養子縁組の両制度の成果を一つの指標とした場合,成果値は25.1%となり,現行(里親等委託率18.3%)よりも6.8ポイントの増加となった。

結論 現行指標の定義では,里親委託等と養子縁組との間に相殺関係が生じており,両制度を推進するとした国の方向性と齟齬がある。試算の結果,現行指標では成果値も過少となる。現行指標のままでは,例えば,妊娠中から児童相談所が相談に対応し,特別養子縁組を前提とした新生児の里親委託を行うなどの,地方公共団体の先進的取組の成果も十分に反映できないだろう。令和元年の民法改正により特別養子縁組の対象年齢が拡大となったが,これにより,今後さらに相殺の影響も拡大するだろう。このため,家庭養護優先の考え方を徹底し,現行指標の定義を改正して,里親委託等と養子縁組の両制度の成果を表す指標を採用すべきであろう。

キーワード 里親委託,養子縁組,特別養子縁組,家庭養護,指標,里親等委託率

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