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論文記事:高齢者の社会貢献活動の取り組みの現状と取り組めるきっかけおよび条件 202007-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第67巻第7号 2020年7月

高齢者の社会貢献活動の取り組みの現状と
取り組めるきっかけおよび条件

-性別および社会貢献活動への意向別の検討-
福島 忍(フクシマ シノブ)

目的 地域の生活課題の解決には高齢者の力がより活用されることが目指されているという背景から,本論文の目的は,高齢者の社会貢献活動の取り組みの状況,社会貢献活動に取り組めるきっかけや条件を性別および社会貢献活動(以下,活動への意向)への意向別に検討し,高齢者の社会貢献活動の取り組みが進展するための促進方法について考察することである。

方法 東京都A市にある集合住宅(分譲マンションと都営住宅)に居住する高齢者に,事前に自治会長に許可を得た上で無記名自記式質問紙調査を行った。調査期間は,2017年6月20日から10月15日である。分析対象者数は,性別の回答があった330人である。性別や活動への意向別の差の比較検討ではχ2検定を行った。

結果 本研究において,社会貢献活動をしたいと思っている高齢者は男女とも6割であったが,実際には7割の人が何らかの社会貢献活動を行っており,多くの高齢者において取り組まれていることが確認された。自治会活動が男女ともに最も多く取り組まれていた。シルバー人材センターを通した活動は男性で有意に多く行われていた。活動に取り組めるきっかけとして男性で一番多かったのは「行政や社協などによる募集」であり,女性で多かったのは「家族や他者からの勧め・誘い」であった。活動に取り組める条件では男女ともに「友人・知人と一緒にできること」と「自らの健康状態がよくなること」が多かったが,「通う手段が確保されること」は女性に有意に多かった。活動への意向別にみると,活動への意向がある人の方がそうでない人に比べ実際に活動に取り組んでいる傾向があった。活動への意向があまりない人においても,きっかけや条件によって取り組めると感じている人がいることが明らかになった。

結論 社会貢献活動に取り組む人を増やすための視点としては,活動への意向のある人を情報発信の強化や研修会の開催,活動への誘いを通してより実際の活動につなげていくこと,また活動への意向があまりない人に対しては,まずきっかけをつくり,活動に参加してもらうことで自らの役割を認識してもらうことや地域課題を学ぶ学習会などを通して活動に関心を持ってもらうことが有効である。社会貢献活動をする際に友人と一緒にできることや同世代と交流できることを取り組める条件としてあげている人が多かったことから,その点も考慮した活動の展開が求められる。また特に女性においては通う手段が確保されることも条件としてあげられており,活動に参加するための送迎も含めた支え合い活動も今後より重要である。

キーワード 社会貢献活動への意向,社会貢献活動に取り組めるきっかけ・条件,高齢者,地域の生活課題

 

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