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論文記事:生活保護の厳格化は今も支持されているか? 202010-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第67巻第12号 2020年10月

生活保護の厳格化は今も支持されているか?

-時代効果,社会経済階層,利用するメディアとの関連-
山田 壮志郎(ヤマダ ソウシロウ) 斉藤 雅茂(サイトウ マサシゲ)

目的 生活保護の厳格化志向に関する先行研究では,包括的な従属変数を用いて,社会経済階層および利用するメディアとの関連が分析されてきたが,生活保護の厳格化をめぐる論点は多岐にわたるため,細分化された従属変数によって検討する必要がある。また,生活保護バッシング報道が沈静化する中,厳格化志向の時代的な変化を明らかにすることも重要である。そこで本研究では,生活保護の厳格化志向を細分化して捉えたうえで,それらが時代的にどう変化しているのか,また社会経済階層やメディア接触は厳格化志向にどう影響しているのかを分析することを目的とした。

方法 2014年と2018年に実施した生活保護に関するインターネット意識調査の結果を分析した。生活保護の厳格化に関する6つの側面(高生活保護費,不正受給厳罰化,扶養義務強化,外国人保護禁止,医療費一部負担,ギャンブル禁止)に対する態度を従属変数とした。第1に,2014年と2018年の態度の変化について記述統計量を確認した。第2に,厳格化志向に関連する要因を,時代効果,社会経済階層(職業,世帯税込年収),利用メディアを独立変数とする2項ロジスティック回帰分析により検討した。

結果 高生活保護費,不正受給厳罰化,扶養義務強化の3項目で時代効果が確認され,2014年より2018年の厳格化志向は弱まった。時代効果をコントロールした解析では,高生活保護費と医療費一部負担の2項目は,非正規社員や無職が厳格化志向をもちにくかった。また,不正受給厳罰化とギャンブル禁止の2項目は,年収が高いほど厳格化志向をもちやすかった。信頼できるメディアとしてインターネットを選択する人は,ほとんどの項目で厳格化志向をもちやすかった。特に,外国人保護禁止でその傾向が顕著だった。

結論 生活保護の厳格化志向のうち,高生活保護費,不正受給厳罰化,扶養義務強化は時代の影響が強く近年になって厳格化志向は弱まっている。また,不安定な就労状態にある人は,社会保障の抑制につながる厳格化に賛同しにくく,高収入層は生活保護受給者のモラルの観点から厳格化を求める傾向にある。

キーワード 生活保護,厳格化志向,時代効果,社会経済階層,利用メディア,インターネット調査

 

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