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論文記事:転倒者が少ない地域はあるか 201407-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第61巻第7号 2014年7月

転倒者が少ない地域はあるか

-地域間格差と関連要因の検討:JAGESプロジェクト-
林 尊弘(ハヤシ タカヒロ) 近藤 克則(コンドウ カツノリ)
山田 実(ヤマダ ミノル) 松本 大輔(マツモト ダイスケ)

目的 転倒予防における1次予防(ポピュレーション戦略)の可能性を探るため,果たして転倒が少ない地域があるのか,あるとすれば転倒割合に関連する要因は何かを社会的要因に着目して検討することを目的とした。

方法 A半島に属している6保険者(9市町村)に居住する要支援・要介護認定を受けていない高齢者に郵送調査を行った。分析では,地域間の高齢化の影響を減らすため前期・後期高齢者に層別化し,小学校区(n=64)ごとの過去1年間の転倒歴がある者の割合(転倒割合)を求めた。次に,過去1年間の転倒歴と関連しうる社会的要因として,等価所得(中・高所得者割合)や教育年数(高学歴者割合),地域組織への参加(スポーツ組織への参加割合)に着目し,小学校区を分析単位とした地域相関研究を行った。

結果 アンケート調査の回答者は29,117人であった(回収率62.4%)。そのうち分析対象は,ADL非自立者,抑うつ(傾向)の者を除外した16,102人とした。前期高齢者では,転倒割合は小学校区で最小7.4%~最大31.1%と約4倍の差があった。中高所得者が多い(r=-0.54),高学歴者が多い(r=-0.41),スポーツ組織への参加が多い(r=-0.60)地域で転倒割合は有意に低かった。また,所得・教育水準で調整しても,「スポーツ組織への参加」割合が多いほど,転倒が少ない関連がみられた(p<0.01)。後期高齢者でも関連は弱くなるものの(r=-0.32)同様の結果であった。

結論 前期高齢者では少ない所に比べ約4倍,後期高齢者でも約3倍も転倒割合が高い小学校区が存在した。その一部は,社会経済水準の違いで説明できたが,それを考慮しても「スポーツ組織への参加」が多い地域ほど転倒が少なかった。今後,他の交絡要因を考慮した研究が必要だが,転倒の少ないまちづくりによるポピュレーション戦略の可能性が示唆された。

キーワード 介護予防,転倒予防,ポピュレーション戦略,地域づくり・まちづくり

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