論文
第59巻第8号 2012年8月 転倒発生の少ない市町はあるか:AGESプロジェクト山田 実(ヤマダ ミノル) 松本 大輔(マツモト ダイスケ) 林 尊弘(ハヤシ タカヒロ)中川 雅貴(ナカガワ マサキ) 鈴木 佳代(スズキ カヨ) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) |
目的 高齢者の転倒要因には,身体的要因や環境要因等の因子が挙げられているが,地域要因はあまり検証されていない。本研究の目的は身体要因や環境要因で調整してもなお,転倒が少ない市町(地域要因)が存在するのか検証することである。
方法 AGES(愛知老年学的評価研究)プロジェクト2003年のデータを用いた。分析対象は,愛知県知多半島の7つ(A~G)の市町に居住し用いた変数に欠損のない8,943名(72.9±6.0歳)を分析対象とした。過去1年間で2回以上の転倒経験の有無を目的変数とし,A~Gまでの市町ダミー変数を説明変数に,そしてその他の転倒関連個人因子および環境因子を調整変数として投入した多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。
結果 全市町における2回以上の転倒発生率は8.3%(最小8.0%~最大10.1%)であった。ロジスティック回帰分析によって,様々な転倒関連因子で調整した結果,B市町はG市町(レファレンス市町)に比べて有意に転倒発生割合が少なかった(オッズ比=0.673,95%信頼区間:0.474-0.955)。
結論 転倒に関連すると考えられている個人因子や自宅周辺環境,農村・都市など地域類型で調整してもなお,転倒発生オッズ比がリファレンス市町に対して約3割も低い「転倒が少ない市町」が存在した。
キーワード 転倒,市町,高齢者