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第55巻第5号 2008年5月 市区町村別にみた死因別死亡率のベイズ推定について長谷川 功(ハセガワ イサオ) |
目的 市区町村別生命表のような小規模地域における死亡状況を表す指標を算出する際に死因分析を行うことを目標として,小地域の不安定性を解消し,かつ,全死因については従来の推定方法との整合性を持つような死因別死亡率の推定方法を導入し,算出結果を検討する。
方法 従来の市区町村別生命表において中央死亡率をベイズ推定する際に用いるモデル(尤度関数を二項分布,事前分布をベータ分布)を多変数に拡張したモデルとして知られている多項分布とディリクレ分布との組を死因別中央死亡率のベイズ推定モデルとすることを提案する。さらに,導入したモデルにより算出される死因別中央死亡率(ベイズ推定値)を用いて死因を除去した場合の平均余命の延びと死因別死亡確率を試算して,モデルの有用性を検討した。
結果 試算した2種類の指標について,人口規模の小さな市区町村に対しては偶然変動の影響を抑えた結果が得られ,その一方で,人口規模の大きな市区町村に対しては,ベイズ推定を用いない方法とほぼ等しい結果が得られた。
結論 本稿で作成したベイズ推定値は小地域の死亡状況の分析手法として今後検討を重ねて活用されることが期待される。また,生命表以外の死因分析についても本稿と同様な方法で指標を作成できるかどうか今後研究する価値がある。
キーワード 市区町村別生命表,ベイズ推定,死因分析,平均余命の延び,死因別死亡確率