論文
第54巻第8号 2007年8月 日本語版「WHO-5精神的健康状態表」の信頼性ならびに妥当性-地域高齢者を対象とした検討-岩佐 一(イワサ ハジメ) 権藤 恭之(ゴンドウ ヤスユキ) 増井 幸恵(マスイ ユキエ)稲垣 宏樹(イナガキ ヒロキ) 河合 千恵子(カワアイ チエコ) 大塚 理加(オオツカ リカ) 小川 まどか(オガワ マドカ) 髙山 緑(タカヤマ ミドリ) 藺牟田 洋美(イムタ ヒロミ) 鈴木 隆雄(スズキ タカオ) |
目的 世界保健機関が精神的健康の測定指標として推奨する「WHO-5精神的健康状態表」(WHO5)の信頼性ならびに妥当性の検討を行った。
方法 64~89歳の地域高齢者1,098人(男性423人,女性675人)を分析の対象とした。WHO5は,日常生活における気分状態を対象者本人に問う5つの質問項目(例:「最近2週間,あなたは,明るく,楽しい気分で過ごすことができましたか」)から構成される。各質問項目について6件法で回答を求め,各項目の素点を加算しWHO5総得点を算出した(得点範囲:0~25点,得点が高いほど精神的健康が良好であることを意味する)。既存の精神的健康測定尺度(General Health Questionnaire28項目版(GHQ),Philadelphia Geriatric Center morale scale(PGCモラール尺度)),社会経済的要因(教育歴,ひとり暮らし,経済状態,ソーシャル・サポート),身体的要因(1年以内の入院有無,生活習慣病(脳卒中,心臓病,高血圧,糖尿病,がん),身体的痛み,高次生活機能(老研式活動能力指標で測定),握力,健康度自己評価)を測定し分析に用いた。
結果 WHO5の5項目におけるα係数は男女とも0.81であった。WHO5総得点には性差が認められなかった。WHO5総得点には年齢差が認められ,80歳以上の高齢者は64~69歳の高齢者よりも得点が低いことが示された。WHO5総得点と,既存の精神的健康測定尺度(GHQならびにPGCモラール尺度)や,社会経済的要因(教育歴,ひとり暮らし,経済状態,ソーシャル・サポート)ならびに身体的要因(1年以内の入院,生活習慣病,身体的痛み,握力,高次生活機能,健康度自己評価)との関連が見いだされた。
結論 WHO5は信頼性ならびに妥当性を有しており,地域高齢者の精神的健康を測定する簡易的尺度として有用であることが考えられる。
キーワード WHO-5精神的健康状態表,地域高齢者,信頼性,妥当性,横断調査