論文
第54巻第6号 2007年6月 日本語版「ソーシャル・サポート尺度」の信頼性ならびに妥当性-中高年者を対象とした検討-岩佐 一(イワサ ハジメ) 権藤 恭之(ゴンドウ ヤスユキ) 増井 幸恵(マスイ ユキエ)稲垣 宏樹(イナガキ ヒロキ) 河合 千恵子(カワアイ チエコ) 大塚 理加(オオツカ リカ) 小川 まどか(オガワ マドカ) 髙山 緑(タカヤマ ミドリ) 藺牟田 洋美(イムタ ヒロミ) 鈴木 隆雄(スズキ タカオ) |
目的 本研究は,Zimet GDらが開発した「ソーシャル・サポート尺度」(Multidimensional Scale of Perceived Social Support)の日本語版を作成し,中高年者を対象として信頼性ならびに妥当性の検討,短縮版尺度の作成を行うことを目的とした。
方法 58~83歳の中高年者1,891人(男性760人,女性1,131人)を分析の対象とした。ソーシャル・サポート尺度は12項目から成り,回答は7件法(1:「全くそう思わない」~7:「非常にそう思う」)で求め,ソーシャル・サポート尺度全体ならびに下位尺度ごとに平均値を算出し得点化した。得点が高いほどソーシャル・サポートが高いことを意味する。その他,居住形態,婚姻状況,親友の人数,親子関係満足度,夫婦関係満足度,General Health Questionnaire 28項目版(GHQ)を測定し分析に用いた。
結果 ソーシャル・サポート尺度の因子分析を行ったところ,原版と同様の3因子構造(「家族のサポート」「大切な人のサポート」「友人のサポート」)が確認された。内的整合性の指標であるクロンバックのα係数を算出したところ,ソーシャル・サポート尺度と3つの下位尺度におけるα係数は,それぞれ,0.91,0.94,0.88,0.90であり,十分な信頼性を有していることが示された。ソーシャル・サポート尺度ならびに3つの下位尺度と居住形態,婚姻状況,親友の人数,親子関係満足度,夫婦関係満足度,GHQ間には関連が認められ,上記要因を外部基準とした場合の妥当性を有していることが示された。また,7項目から成る「ソーシャル・サポート尺度短縮版」は,ソーシャル・サポート尺度12項目版と高い正の相関関係にあり,得点分布形状,性差ならびに年齢差は12項目版と同様の傾向を示し,信頼性ならびに妥当性を有していることが示された。
結論 ソーシャル・サポート尺度日本語版ならびに同短縮版は信頼性ならびに妥当性を備え,中高年者におけるソーシャル・サポートの測定指標として有用であることが考えられる。
キーワード ソーシャル・サポート尺度,中高年者,信頼性,妥当性,横断調査