論文
第63巻第6号 2016年6月 児童相談所で把握される自殺の実態と自死遺児支援の状況白神 敬介(シラガ ケイスケ) 竹島 正(タケシマ タダシ) 川野 健治(カワノ ケンジ)小野 善郎(オノ ヨシロウ) 藤林 武史(フジバヤシ タケシ) 川崎 二三彦(カワサキ フミヒコ) 白川 教人(シラカワ ノリヒト) 勝又 陽太郎(カツマタ ヨウタロウ) 大塚 俊弘(オオツカ トシヒロ) |
目的 児童相談所を対象に自死遺児の実態とその支援の状況を明らかにすることを目的として調査を実施した。また,自死遺児への支援において,児童相談所が認識する課題について検討を行った。
方法 全国207カ所の児童相談所を対象に調査票を配布し,平成25年度中に同居家族等に自殺既遂がみられた事例等の数,児童相談所に統合もしくは併設されている他の専門機関との組織的関連付け,児童相談所における自死遺児支援サービスの実施有無,自死遺児への支援もしくは自殺対策を行ううえでの困難について回答を求めた。
結果 160の児童相談所から回答を得た(回収率76.9%)。平成25年度中に児童相談所で把握された同居家族等の自殺を経験した児童の数は,138人であった。自死遺児支援としてのサービスを実施している児童相談所は,5.6%(9/160)であった。児童相談所において自死遺児への支援もしくは自殺対策を行う場合の困難として,最も多かった回答は「人材の確保」であった。
考察 本調査より,自死遺児あるいはその同居家族等のうちの自殺者が児童相談所において一定数把握されていることが示された。一方で,自死遺児向けのサービスを実施していると回答した児童相談所は一部に限られており,児童相談所における自死遺児支援の実施には困難が存在することが示唆された。今後,児童福祉領域における自殺リスクの高さを踏まえ,児童相談所において人材の確保や専門家養成を進めるとともに,児童福祉領域全体で自死遺児支援への共通理解を形成し,仕組み作りを行っていくことが必要であると考えられる。
キーワード 自殺,自死遺児,児童相談所,児童福祉,自殺対策,自死遺児支援