論文
第63巻第6号 2016年6月 たばこ規制に対するたばこ使用者を
仲下 祐美子(ナカシタ ユミコ) 大島 明(オオシマ アキラ) |
目的 たばこ使用者のたばこの健康影響に関する認識,たばこ規制に対する意識や規制から受けているインパクトについて把握し,調査結果の国際比較により,今後,日本が取り組むべきたばこ規制の課題を検討した。
方法 全国のたばこ使用者2,000人を対象に,たばこの健康影響に関する認識,たばこ規制(受動喫煙防止,たばこ価格政策,たばこの警告表示)に対する意識や規制から受けているインパクトについてインターネット調査を行った。調査期間は2014年10~11月である。諸外国の調査結果との比較は,2004~2013年に17~21カ国で実施されたITC Projectの調査結果を用いた。たばこ規制の進展度の評価はWHOによるMPOWER報告を用いた。
結果 たばこの健康影響に関する認識は,能動喫煙と脳卒中,受動喫煙と心筋梗塞,肺がんの関係について「いいえ」もしくは「わからない」と回答した割合は51~57%であった。たばこ規制が進んでいる諸外国では日本の1/2~1/3と低率であり,わが国と同程度の規制の国でも日本より低率であった。受動喫煙防止規制に関しては,過去1カ月以内に職場もしくは過去6カ月以内にレストラン・喫茶店,居酒屋・バーでたばこを吸っている人がいたと回答した割合は,それぞれ54%,66%,83%であり,たばこ規制が進んでいる諸外国ではいずれも30%以下であった。また,規制への支持として,これらの場所の屋内全面禁煙に賛成した割合は6~14%であり,たばこ規制が進んでいる諸外国では日本の5~15倍高く,わが国と同程度の規制の国でも2~10倍高かった。たばこ価格政策に関しては,たばこに費やすお金が原因で生活費が圧迫されたことがあったと回答した割合は11%であり,諸外国と比べて低かった。たばこ包装の警告表示をきっかけに健康への害を考えることが「大いにある」と回答した割合は3%にすぎず,たばこ規制が進んでいる諸外国では日本の4~15倍,わが国と同程度の規制の国でも2.6~8倍高かった。
結論 たばこ規制の進展度を評価したWHOのMPOWER報告において,たばこ規制が進んでいる国だけでなく,わが国と同程度の規制とされた国と比べてもたばこ規制の政策から受けるインパクトは小さく,それが日本のたばこ使用者の健康影響の認識やたばこ規制に対する意識の低さに現れていた。
キーワード たばこ規制枠組条約,ITC Project,たばこ使用者,国際比較