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論文記事:養介護施設従事者がとらえる高齢者虐待発生要因とその再発防止策 201606-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第63巻第6号 2016年6月

養介護施設従事者がとらえる
高齢者虐待発生要因とその再発防止策

吉田 輝美(ヨシダ テルミ)

目的 高齢者虐待防止法は2006年4月に施行され,厚生労働省は毎年都道府県ごとの高齢者虐待の状況を公表している。高齢者虐待判断件数は平成18年度54件であったが,平成25年度には221件となっている。本研究では,養介護施設従事者がとらえる高齢者虐待発生要因は何か,さらに高齢者虐待を再発させないために必要なことを,養介護施設従事者等はどのように捉えているのかを明らかにすることを目的とした。

方法 都道府県ごと人口最多自治体と最少自治体を選び,その中から調査対象事業所を①特別養護老人ホーム,②老人保健施設,③通所介護,④訪問介護,⑤グループホームの5種類とした。1種類ごとに5カ所ずつ無作為に事業所を抽出したが,人口最少自治体で事業所数の少ない場合は,その数のみとして合計1,368事業所へ郵送で調査を依頼した。調査期間は2014年8月11日から2014年9月10日である。アンケート回答者からは,個人ごとに厳封し郵送で返信してもらった。

結果 高齢者虐待発生要因の選択肢項目で最も高かったのは,全事業所で「職員のストレスや感情コントロールの問題」であった。高齢者虐待防止法にもとづく高齢者虐待の状況の公表について知っているか否かで2群に分け,知っている群と知らない群ともに,高齢者虐待発生要因の選択肢項目で最も高かったのは「職員のストレスや感情コントロールの問題」であった。

結論 厚生労働省の公表で最も高かった項目は,「教育・知識・介護技術等に関する問題」であったが,本調査では,「教育・知識に関する問題」は中位の認識であり,「介護技術等に関する問題」については事業所別,年代別,取得資格別にみると最下位に認識された点で大きく異なる。この差異は,虐待を調査もしくは判断する側と,養介護施設従事者の発生要因の捉え方によるものと考えられる。現場の養介護施設従事者等は「教育・知識・介護技術等に関する」研修ではなく,「職員のストレスや感情コントロールの問題」に対応する研修を望んでいるのではないかと考えられた。

キーワード 高齢者虐待,養介護施設従事者による虐待,虐待の発生要因,職員のストレス,感情コントロール

 

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