論文
第63巻第7号 2016年7月 地域包括ケアシステム構築における住民参加の可能性坂本 俊彦(サカモト トシヒコ) |
目的 見守り活動を中心とする生活支援活動に対する地域住民の意識・態度の分析を通して,活動参加の傾向と参加促進のあり方について検討することを目的とした。
方法 全域が中山間地域であるA県B市C,D,E地区在住の,20歳以上住民2,250人を対象とする無作為抽出質問紙調査によって得られたデータについて,生活支援活動に対する「参加経験」の有無を従属変数,①基本属性,②近隣関係,③地域参加,④地域意識,⑤介護経験,⑥活動支持理由の6領域14変数を独立変数とするロジスティック回帰分析を地区別に行い,その結果について地区間比較を行い,結論を導いた。
結果 C地区では,「交流深度深い」群が「浅い」群より2.32倍,「身内介護経験あり」群が「経験なし」群より2.50倍,「情念互助同意あり」群が「同意なし」群より3.75倍,参加経験を有していた。D地区では,「貢献意欲あり」群が「意欲なし」群より3.77倍,「情念互助同意あり」群が「同意なし」群より2.32倍,参加経験を有していた。E地区では,「年齢50歳以上」群が「50歳未満」群より7.16倍,「地域活動参加あり」群が「参加なし」群より2.45倍,「貢献意欲あり」群が「なし」群より2.88倍,「情念互助同意あり」群が「同意なし」群より2.73倍,参加経験を有していた。
結論 3地区の結果を比較した結論は次のとおりである。①住民参加の様態は地域社会ごとに多様であり,その促進方法は地域社会の実情に合わせてきめ細かく検討のうえ住民自治組織との協働によって実施すべきである。②3地区共通の変数は,身近で具体的な事例の認知とこれに対する共感を意味する「情念互助」であり,支援対象者の生活困難の様態と支援の意義について可能な範囲で周知する必要がある。③2地区で確認できた変数は「地域貢献意欲」であり,平素より居住地域に対する貢献意欲の維持向上に努めるとともに,生活支援活動が支援対象者のQOL維持向上のみならず,安心な地域社会の構築につながることを周知していく必要がある。④C地区では「交流深度」「身内介護」,E地区では「年齢50歳以上」「地域活動参加」との関連が認められ,地域特性あるいは活動特性による影響が想定されるが,あくまで1つの地域についての結果であり,今後の比較調査によって検証していく必要がある。
キーワード 地域包括ケアシステム,住民の助け合い,生活支援活動,住民参加