論文
第63巻第7号 2016年7月 地域作りに向けた回想法の認知度-地域包括支援センターと社会福祉協議会への意識調査から-津田 理恵子(ツダ リエコ) |
目的 地域福祉を担う地域包括支援センターと社会福祉協議会の地域における回想法活用に関する意識を明確にし,今後の地域作りに向けた方向性を見いだすことを目的とした。
方法 調査対象は,日本全国の各都道府県から7件ずつ無作為抽出した地域包括支援センター329件と社会福祉協議会329件の合計658件で,2013年12月~2014年2月の期間に往復はがきによる郵送法で回想法に関する意識調査を実施し,無記名,自己記入式で回答を求めた。分析にSPSS21.0を使用し,施設間の比較にはχ2検定を用いた。自由記述回答は,内容を忠実にカテゴリー化して施設ごとに表に整理した。倫理的配慮について説明し同意書による承諾を得た。
結果 有効回答は地域包括支援センターが232件(63.6%),社会福祉協議会が133件(36.4%)で,回想法の技法を「知っている」と答えたのは全体の56.7%で,回想法の技法が地域作りに役立つことを「知っている」と答えたのは32.6%,回想法を活用した地域作りに「関心がある」と答えたのは68.5%であった。地域包括支援センターと社会福祉協議会の比較では,地域包括支援センターの方が回想法の技法が地域作りに役立つことを知っていると答え,回想法を活用した地域作りに関心があると答えていた。
考察 地域福祉を担う地域包括支援センターと社会福祉協議会は回想法を活用した地域作りの拠点としてその役割を担うことが期待できることから,回想法の技法が地域作りに役立つことを広く啓発していくことが大切である。そして,地域で回想法を活用した地域作りに取り組むことで介護予防効果が期待できるだけでなく,既存の社会資源や地域住民の力を活用した認知症高齢者を地域で支える仕組み作りに発展する可能性がある。
キーワード 回想法の認知度,地域作り,地域包括支援センター,社会福祉協議会