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論文記事:認知の偏りと抑うつの関連 201608-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第63巻第8号 2016年8月

認知の偏りと抑うつの関連

-認知の偏り測定尺度の妥当性と信頼性の検討から-
江口 実希(エグチ ミキ) 國方 弘子(クニカタ ヒロコ) 土岐 弘美(トキ ヒロミ)

目的 認知行動療法は,抑うつに関連する変容可能な認知要因として,認知の偏り,自動思考を取り扱う。認知の偏りは,出来事を肯定的に捉えるか否定的に捉えるかに関係し,抑うつに大きな影響力をもつ。これまで認知の偏りを測定する尺度は少なく,尺度の妥当性と信頼性の検討は十分に行われていない。本研究は,認知の偏り測定尺度(Cognitive Bias Scale :CBS)の妥当性と信頼性の検討に加え,認知の偏りと抑うつの関連を検討する。

方法 調査は平成26年9~10月に行われ,対象は,A病院に勤務し調査協力が得られた543名の看護師とした。調査項目は, CBS,ベック抑うつ尺度(Beck Depression Inventory:BDI),属性で構成した。分析は,CBSの確証的因子分析による因子構造妥当性の検討に加え,BDIの得点で健常群と抑うつ群の2群に分類した対象を,CBSでどの程度識別できるか判別的妥当性の観点から検討した。次いで,CBSとBDIの関連をSpearmanの順位相関係数を算出して検討した。尺度の信頼性の検討にはCronbachのα係数を用いた。

結果 CBSとBDIの回答に欠損値がない444名を分析対象とした。確証的因子分析の結果,CBS の6因子二次因子モデルと6因子斜交モデルのデータへの適合度は統計学的許容水準を満たさなかった。しかし,6下位尺度ごとの直交モデル(先読み,べき思考,思い込み・レッテル貼り,深読み,自己批判,白黒思考)は,直交モデルすべてのデータへの適合度が良好であった。この時,Cronbachのα係数は0.693~0.825の範囲であった。CBS6下位尺度の中央値は,BDI抑うつ群と健常群においてすべての下位尺度で2群間に有意差がみられた。また,CBSの6下位尺度とBDIの関係係数は0.357~0.575であった。

結論 CBSの6下位尺度直交モデルの因子構造妥当性と判別的妥当性ならびに信頼性は支持され,CBSは抑うつに関連した認知的要因を測定しうる尺度であることが示唆された。

キーワード 認知の偏り,推論の誤り,CBS,BDI,抑うつ,妥当性

 

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