論文
第63巻第11号 2016年9月 療育サービスの子どもと家族への効果の評価に関する全国実態調査植田 紀美子(ウエダ キミコ) 米本 直裕(ヨネモト ナオヒロ) |
目的 わが国において療育サービスの子どもと家族への効果が評価されているかを把握する。
方法 全国の児童発達支援センター(医療型・福祉型)444箇所に対して,記名式自記式質問票を用いた郵送調査法による実態調査を実施した。調査内容は,障害児通所支援の規模,療育サービスの子どもと家族への効果の評価状況(評価有無,評価内容)についてである。療育サービスの効果の評価状況をセンター種別に示し,評価内容を整理した。子どもと家族への効果を評価している児童発達支援センターの特徴を検討した。
結果 調査票は197施設(回収率44.3%)から回答を得て,有効回答であった186施設を解析対象とした。37.6%の施設が療育サービスの子どもへの効果を評価していた。評価していると回答した施設の52.9%が,ポーテ―ジプログラム,津守・稲毛式乳幼児精神発達診断,新版K式発達検査などの発達検査を療育サービスによる子どもへの効果の評価であると考え,1年に1~2回,これらの様式による発達検査を行っていた。また,個別支援計画を活用した施設もあった(24.3%)。残りの施設は,家族へのアンケート,聞き取り,関係者会議などで各施設独自の方法で療育サービスの子どもへの効果を評価していた。療育サービスの家族への効果は,19.4%の施設が評価していた。評価していると回答した施設の69.4%が,療育サービスの利用満足度のアンケートを実施していた。その他の30.6%は,アンケートなどの特定の様式を使用するのではなく,懇談や聞き取りなどで評価を行っていた。療育サービスにより家族の知識や行動が変化したかどうかを評価した施設はなかった。子どもへの効果を評価している施設の方が有意に多く,家族への効果を評価していると回答していた。家族への効果を評価していると回答したところは評価していないところに比べて,就学前乳幼児の利用契約総数が有意に多かった。
結論 療育の代表的施設である児童発達支援センターにおける療育サービスの効果の評価状況を明らかにした。療育サービスの子どもと家族への効果は十分に評価されておらず,今後,療育の充実のためには,療育サービスの標準化された評価法の開発および普及と活用が望まれる。
キーワード 障がい児,療育,療育サービス,児童発達支援センター,評価,実態調査