論文
第63巻第11号 2016年9月 犯罪被害者等の実態から見えてくる暮らしの支援の必要性-511名の犯罪被害者等のWEB調査実態調査結果から-大岡 由佳(オオオカ ユウカ) 大塚 淳子(オオツカ アツコ)岸川 洋紀(キシカワ ヒロキ) 中島 聡美(ナカジマ サトミ) |
目的 被害者支援は,平成16(ʼ04)年犯罪被害者等基本法の施行に伴って大きく前進し,裁判に絡めた法律的側面や心のケアの側面から多くの支援策が講じられてきた。一方で,被害者の生活ニーズへの支援に着目されることは多いとは言えず,それらの支援策については地域格差が生じている。犯罪被害者等における苦悩の程度や生活の実態・支障を把握し,今後の犯罪被害者等支援の在り方を模索する。
方法 調査は,平成27(ʼ15)年3月6日~10日の5日間で行った。犯罪被害にあった被害者等に,WEB調査によって回答を求めた。調査項目は,性別,年齢,学歴,年収,被害後の生活困難内容,社会生活障害の程度,受診の有無,相談先,支援制度の知識に加え,K6(うつ病・不安障害に対するスクリーニング尺度)を用いた。
結果 平均年齢は47.8歳,犯罪種別は,殺人・殺人未遂,傷害等の暴力犯罪,交通事故,性犯罪等で,被害後平均15.8年経過している計511名の犯罪被害者等から回答を得た。K6による精神健康状態については,平均値は12.4点で,K6(≧13)の精神障害のハイリスク者は41.7%に上った。83.8%が心理・精神面で苦痛を感じ,被害後の生活維持・再建のために,居住,経済,医療・介護,生活,司法面のサービスを求めていた。事件事故からの時間の経過とともに,精神健康状態は良好になる一方で,若い犯罪被害者ほど精神健康状態が悪かった。
結論 犯罪被害者等の精神的苦悩は深刻であり,被害者の暮らしを支える制度・サービスの拡充・広報の充実とともに,相談を受けた際の適切な相談支援が行える地方公共団体等の体制整備が求められる。
キーワード 犯罪被害者,精神的不調,K6,暮らし,相談支援