論文
第63巻第11号 2016年9月 地域包括支援センターが受診援助を行っている
中尾 竜二(ナカオ リュウジ) 杉山 京(スギヤマ ケイ) 三上 舞(ミカミ マイ) |
目的 地域包括支援センターが認知症の疑いのある高齢者を早期に発見し,早期受診を実現するために有用な資料を得ることをねらいに,地域包括支援センターが受診援助を行っている認知症の疑いのある高齢者の援助依頼者とその遠近構造を明らかにすることとした。
方法 中国・四国地方ならびに九州地方(沖縄県を除く)に設置されている地域包括支援センターに勤務する専門職1,500名を対象に,無記名自記式の質問紙調査を実施した。調査内容は,過去1年以内に認知症の疑いのある高齢者の受診援助を行った経験の有無,認知症の疑いのある高齢者の援助依頼者などで構成した。解析には,各項目に欠損値のない480名の資料を用いた。統計解析は,認知症の疑いのある高齢者の援助依頼者の遠近構造はクラスター分析を用いて類型化し,コンボイモデルを参考に地域包括支援センターとの関係を構造化した。
結果 地域包括支援センターの専門職における認知症の疑いのある高齢者への受診援助に関するケースの援助依頼者(紹介元の機関および人)について,クラスター分析を行った結果,3つのクラスターが抽出された。コンボイモデルを参考に模式化した結果,内層には,「民生委員」「高齢者の同居家族」「高齢者の別居家族」,中層には,「同じ市町村の福祉事務所」「高齢者の近隣住民」「高齢者本人」,外層には,「通所介護事業所」「福祉用具貸与・給付関連事業」「特別養護老人ホーム」など18の機関および人が位置していることが確認された。
結論 地域包括支援センターが,受診援助を行っている認知症の疑いのある高齢者の援助依頼者とその遠近構造が明らかとなった。しかし本研究では,認知症の疑いのある高齢者の受診援助における地域包括支援センターの直近に位置する機関および人が明らかとなったものの,地域包括支援センターへ至るまでの過程は明らかとならなかった。今後は,認知症の疑いのある高齢者が地域包括支援センターへ至るまでの詳細な過程を検証していくことが課題である。
キーワード 認知症,受診,地域包括支援センター,民生委員,コンボイモデル