論文
第63巻第12号 2016年10月 日本における喫煙による死亡数の推移大島 明(オオシマ アキラ) |
目的 喫煙による死亡数の推移を知ることはたばこ対策のモニタリングとして重要である。そこで,WHOが2012年に示した方法に沿って1995年から2014年までの日本における喫煙による死亡数の推移を推計し,先進国との比較検討を行った。
方法 Petoが考案したSmoking Impact Ratio(SIR)と,American Cancer Society Cancer Prevention Study Ⅱにおける主要疾患死亡の非喫煙者に対する喫煙者の相対危険(RR)から人口寄与危険割合(PAF)をPAF=SIR・(RR-1)/(1+ SIR・(RR-1))として計算し,このPAFを各死因による死亡数にかけあわせ喫煙による死亡数を推計した。調査対象期間は1995年から2014年までとし,2010年までは5年ごとに,2011年から2014年までは毎年推計した。
結果 日本における喫煙による死亡数は,2014年には男性で14.60万人,女性で7.28万人,男女合計で21.88万人と推計された。1995年からの推移をみると,30歳以上の男性では,1995年の10.63万人から2010年に14.60万人にまで増加し,その後2012年のピークの15.60万人に達して以降はわずかに減少していたもののいまだ明確な減少傾向は認められなかった。30歳以上の女性では1995年の4.36万人から2010年に7.08万人まで増加し,その後2013年に7.45万人のピークに達していた。30~69歳の年齢層に限ると,男性では1995年の3.83万人から2014年の2.85万人に減少し,女性でも1995年の6,100人から2014年の5,300人に減少していた。
結論 日本における喫煙による死亡数は,1995年以降男性では2012年まで,女性では2013年まで増加しその後いまだ明確な減少傾向は認められなかった。喫煙による死亡数を早く減少させるためには,日本においても,英国や米国,フランスに倣って,早急にたばこ規制枠組条約に盛り込まれた各条項を誠実に履行し,環境改善に取り組む必要がある。
キーワード 喫煙,死亡数,たばこ対策,たばこ規制枠組条約