論文
第63巻第12号 2016年10月 東日本大震災の被災3県の
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目的 東日本大震災の影響をうけた被災3県(岩手県,宮城県,福島県)における在宅療養支援診療所(以下,支援診)の実態を,ストラクチャー,プロセス,アウトカムの3要素から経年的に比較し,今後の在宅医療のあり方の基礎資料を提供することを目的とした。
方法 被災3県の支援診を対象として郵送調査を行った(調査期間:2014年1~2月)。ストラクチャーとして人的資源,プロセスとして多職種連携体制,アウトカムとして療養者数,自宅での看取り数,居住系施設での看取り数の実績を用いて,東日本大震災以前(2010年)と調査時(2013年)とを記述統計学的に比較した。
結果 有効回収数は102件(有効回収率:25%)であった。人的資源は東日本大震災以前と比べて,2013年では常勤医師数がやや多くなっていた。多職種連携体制は,東日本大震災以前と比べて多施設と連携していることが明らかになった。アウトカムは,居住系施設で看取る支援診が増加する傾向がみられた。
結論 東日本大震災以前に比べて,2013年時点での支援診の機能はストラクチャーやプロセス,アウトカムそれぞれが増加していると考えられる。厚生労働省が在宅医療を推進しようとしている方向性と一致しているといえよう。しかし,全国調査結果と比べると,被災3県における支援診の連携体制はまだまだ充分ではないため,連携体制を整備できるようしていくことが望まれる。しかし,療養者や看取りは全国よりも良好な結果であった。この背景には地域コミュニティの豊かさのような地域性の影響が考えられるが,今後の検討が望まれる。
キーワード 在宅療養支援診療所,人的資源,多職種連携体制,看取り,地域コミュニティ,東日本大震災