論文
第63巻第13号 2016年11月 日本版Presenteeism尺度の開発荒木田 美香子(アラキダ ミカコ) 森 晃爾(モリ コウジ)渡部 瑞穂(ワタナベ ミズホ) 古畑 恵美子(フルハタ エミコ) |
目的 日本版presenteeism尺度を開発し,その信頼性・妥当性を確認することを目的とした。
方法 2014年10月にNTTコミュニケーションズが運営するgooリサーチのモニターの中から成人労働者を対象者に無記名の調査を行った。調査は2つからなり,一つは労働者859名(男性535名,女性324名)を対象に,日本版presenteeism尺度案8項目, QOL尺度の短縮版であるSF12(MOS 12-Item Short-Form Health Survey:SF-12),ワーク・エンゲイジメント尺度および回答者の属性を尋ね,信頼性と妥当性の検討を行った。さらに日本版presenteeismの再テストを108名に実施し,再現性を検討した。
結果 確認的因子分析では共分散構造分析を行った。日本版presenteeism尺度案8項目のモデル1ではRMSEAが0.218であった。「通勤で困難を感じる」を削除したモデル2を検討したところ,RMSEAが0.028でAGFI等のモデルの適合度を示す指標も適切な範囲を示した(日本版presenteeism7項目)。SF-12のうち,「身体的な理由で仕事やふだんの活動が思ったほど,できなかった」「心理的な理由で仕事やふだんの活動が思ったほど,できなかった」等の4項目において日本版presenteeism7項目との関係を一元配置分散分析で検討したところ,有意な関係性が認められた。一方,ワーク・エンゲイジメント尺度と日本版presenteeism7項目の相関は認められなかった。信頼性についてはCronbachのα係数は0.911,再現性においても日本版presenteeism7項目のICC(級内相関)の値は0.769~0.669と,十分に高かった。
結論 成人男女労働者を対象として,確認的因子分析にて日本版presenteeism7項目の構成概念妥当性,SF-12の生活の活力に関する項目との基準関連妥当性が確認された。また,信頼性および再テストにおけるICC(級内相関)においても再現性が確認できた。今後,労働生産性の検討ために,業務形態ごとに個人のpresenteeismが職場に与える影響を検討する必要があろう。
キ-ワ-ド 日本版presenteeism,確認的因子分析,再テスト法