論文
第63巻第13号 2016年11月 病院報告に基づく東日本大震災前後における
三重野 牧子(ミエノ マキコ) 川戸 美由紀(カワド ミユキ) 村上 義孝(ムラカミ ヨシタカ) |
目的 東日本大震災前後の病院の患者数の変化について,岩手県,宮城県と福島県の3県で,沿岸部と沿岸部以外の市町村別に,病院報告に基づいて検討した。
方法 平成20年10月~25年2月の病院報告を統計法33条による調査票情報の提供を受けて利用した。東日本大震災から2年間における,地域別の病院の1日平均在院患者数,1日平均外来患者数の変化について,施設の廃止・休止,継続,開設・再開の状況別に分類して観察した。
結果 3県の沿岸部の市町村において,震災1年後の1日平均在院患者数は,震災前と比較して岩手県で3.1%,宮城県で8.4%,福島県で25.1%の減少であった。岩手県と宮城県の減少ではその大部分が病院の廃止・休止であるのに対し,福島県では廃止・休止と継続病院での減少の両方がみられた。震災2年後の1日平均在院患者数は大きな増加がみられなかった。3県の沿岸部以外の市町村では震災1年後に横ばい傾向,2年後に減少傾向がみられた。3県沿岸部の市町村において,震災1年後の1日平均外来患者数は,岩手県では4.2%,宮城県で1.0%,福島県で19.3%の減少であった。岩手県と宮城県では廃止・休止による減少分が継続病院や開設・再開病院での増加によって圧縮されていたが,福島県では,継続病院や開設・再開病院による増加はほとんどなかった。震災2年後の1日平均外来患者数はさらに減少していた。一方,3県の沿岸部以外の市町村では震災1年後に増加し,いずれの県においても継続病院での患者数の増加が大きかったが,震災2年後には減少していた。
結論 3県の沿岸部において,震災前と比較して,震災1年後は患者数が大きく減少し,それには施設の廃止・休止と継続病院の患者数の変化が関連したことが示された。震災2年後では,1年後と比べて大きな増加はみられなかった。
キーワード 病院報告,東日本大震災,病院,患者数,保健統計