論文
第63巻第15号 2016年12月 高齢者ふれあいサロンへの参加と外出行動-サロン参加者・非参加者の比較-白瀬 由美香(シラセ ユミカ) 泉田 信行(イズミダ ノブユキ) |
目的 高齢者を対象として,地域における交流の場を作り,閉じこもりや孤立を防ぐ,ふれあいサロンを開催する取り組みが各地でなされているが,サロン参加と外出行動との関連は明らかになっていない。本研究は,北海道網走市の高齢者ふれあいサロン参加者と参加していない一般高齢者を対象に実施した調査結果をもとに外出頻度の違いを比較し,外出をサポートする資源となりうる世帯構成との関係について明らかにすることを目的とした。
方法 網走市の高齢者ふれあいサロン13カ所の参加者のうち協力の得られた者(参加者)203名,住民基本台帳から無作為に抽出された65歳以上の居住者(非参加者)600名を対象に2013年2月に行った無記名自記式質問紙調査のデータを用いた。外出頻度に関する回答があった参加者172名,非参加者298名のデータを分析の対象とし,参加者と非参加者の基本属性を比較した。外出頻度が週2~3回以上であることを被説明変数として,共変量をコントールしたうえで,同居者の有無や世帯構成を説明変数とする二項ロジスティック回帰分析を行った。
結果 回答者に占める女性割合は,参加者で78.5%,非参加者で54.4%であった。平均年齢は,参加者78.2歳,非参加者74.5歳であった。同居者の有無,世帯構成,先月の通院経験の有無,老研式活動能力指標の得点については,参加者・非参加者で有意な違いはみられなかった。週2~3回以上外出する者の割合は,参加者が81.4%であるのに対して,非参加者は67.8%であった。ロジスティック回帰分析の結果,サロン参加者で同居者がいることは外出頻度を有意に高くしていた。非参加者では同居者がいることによる外出への有意な影響はなかった。ただし,非参加者で「その他の世帯」の女性は,単身および夫婦のみ世帯の女性と比べて外出頻度が有意に低かった。
結論 ふれあいサロンの参加が,外出頻度の維持に関連していることが示された。参加者については同居者のいるほうが外出頻度は高く,非参加者の女性では単身世帯や高齢者夫婦のみ世帯でない場合に外出頻度が低くなっていた。除雪や自動車の運転が必要となる地方都市では,閉じこもり予防策として交流の場であるサロンを設けるだけではなく,外出への多様な支援体制も検討する必要性が示唆された。
キーワード 高齢者,ふれあいサロン,外出,世帯構成,家族