論文
第64巻第1号 2017年1月 卵性別ふたご出産率,死産率,乳児死亡率の
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目的 人口動態統計を用いて,1995~2008年までの1卵性(以下,MZ)と2卵性(以下,DZ)のふたご出産率,死産率,乳児死亡率の年次推移並びにこれらの率に影響を及ぼす要因を調べた。
方法 日本全国における1999~2008年の出生票,死産票,死亡票(1歳未満)の個票テープを使用するため,基幹統計調査の「調査票情報の提供」の承認を得て分析を行った。
結果 MZふたご出産率(分娩千対)は4.15~4.40と横ばいで推移した一方,DZふたご出産率は1995年の4.18から急上昇し,2004年は6.95,2006年は6.93となり,翌年から減少し2008年には5.98まで低下した。DZふたごは1997年以降MZふたごより高い出産率である。MZふたご出産率はすべての母の出産年齢群で横ばいで推移した一方,DZふたご出産率は19歳以下以外のすべての母の出産年齢群で出産率は年次とともに有意に上昇した。MZとDZのふたご死産率は年次と共に有意に減少し,MZはDZより各年次で有意に高い死産率が得られた。DZふたごと単胎児の死産率を比較すると,2003年以降は両者間で差はなかった。卵性別ふたご死産率は両卵性とも母の出産年齢が19歳以下で一番高く,30~34歳で一番低い値が得られた。MZとDZともにふたご死産率は妊娠週数の上昇と共に減少し,37週で一番低い値を示し,その後は上昇した。MZとDZともにふたご乳児死亡率は1995年から2007年までにほぼ半減した。卵性別ふたご乳児死亡率は母の出産年齢が19歳以下で両卵性とも一番高く,一番低い値はMZでは35~39歳,DZでは30~34歳で得られた。一番低い乳児死亡率はMZでは37週,DZでは39週で得られた。妊娠週数が34週まではMZの方がDZより有意に高い値であったが,35週以降は両卵性間で差はなかった。
結論 MZふたご出産率は横ばいで推移した一方,DZふたご出産率は年次と共に上昇し,2004~2006年でピークに達したのちに減少している。MZがDZより有意に高いふたご死産率を示す理由として,MZ特有の死因である双胎間輸血症候群による死産が14%,先天異常による死因割合も高いことが関係している。ふたご乳児死亡率は1995年から2007年までに両卵性ともに1/2まで減少した。両卵性ふたご共に母の出産年齢が19歳以下で一番高い乳児死亡率が得られた。妊娠週数が34週まではMZの方がDZよりふたご乳児死亡率が有意に高い値であったが,35週以降は両卵性間で差はなかった。
キーワード 卵性別ふたご,出産率,死産率,乳児死亡率,母年齢,妊娠期間