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論文記事:東日本大震災による被害状況が被災2年後の精神健康に与える影響の検討 201701-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第64巻第1号 2017年1月

東日本大震災による被害状況が
被災2年後の精神健康に与える影響の検討

-岩手県沿岸部住民を対象とした追跡調査から-
米倉 佑貴(ヨネクラ ユウキ) 丹野 高三(タンノ コウゾウ) 佐々木 亮平(ササキ リョウヘイ)
高橋 宗康(タカハシ シュウコウ) 坂田 清美(サカタ キヨミ) 横山 由香里(ヨコヤマ ユカリ)
小川 彰(オガワ アキラ) 小林 誠一郎(コバヤシ セイイチロウ) 

目的 東日本大震災による家屋被害,同居者の死亡・行方不明,失業の状況と被災2年後の被災者の精神健康の状態の関連性を明らかにすることを目的とした。

方法 2011年度に,岩手県で震災の被害が最も大きかった大槌町,陸前高田市,山田町,釜石市下平田地区において健康診断および質問紙調査を実施し,研究参加に同意した者のうち,2011年度と2013年度の調査の両方に回答が得られた6,699名を分析対象とした。調査項目は,精神健康として2011年度および2013年度のK6得点(4点以下=0,5点以上=1),年齢,婚姻状況,仕事の状況,経済的な暮らし向き,治療中の疾患の有無,震災による同居者の死亡・行方不明の有無,震災による家屋被害の有無,震災による失業の有無を用いた。分析は人口学的特性,社会経済的特性,被害状況と2013年度の精神健康の2変量の関連をみるため,年齢についてはK6得点4点以下,5点以上の2群の比較をWelchのt検定で行った。それ以外の変数については,K6得点との関連をχ2検定で検討した。次に,従属変数を2013年度のK6得点,説明変数を年齢,婚姻状況,仕事の状況,経済的な暮らし向き,治療中の疾患の有無,震災による同居者の死亡・行方不明の有無,震災による家屋被害,震災による失業,2011年度調査時のK6得点としたロジスティック回帰分析を行った。以上の分析はすべて男女別に行った。

結果 男性では,2変量の関連性の検討においては震災による家屋被害や失業といった被害状況は震災2年後の精神健康とは関連が認められたが,多変量調整を行った結果,有意な関連性が消失した。一方で,2013年度の仕事の状況や経済的な暮らし向きは多変量調整後も有意な関連性が認められた。女性では2変量の関連性の検討においては震災による家屋被害,失業や同居者の死亡・行方不明と2年後の精神健康との関連が認められ,同居者の死亡・行方不明,家屋被害は多変量調整後も有意な関連性が残存した。また,多変量調整後も仕事の状況や経済的な暮らし向きは有意な関連性が残り,影響は弱まったものの,家屋被害と同居者の死亡・行方不明も有意な関連性が認められた。

結論 男性では震災による家屋被害や同居者の死亡・行方不明,失業は震災2年後の精神健康とは関連が認められなかったが,現在の社会経済的状況との関連が認められた。一方,女性では震災による家屋被害や同居者の死亡・行方不明と2年後の精神健康との関連が認められた。

キーワード 東日本大震災,精神健康,死別,失業,家屋被害

 

 

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