論文
第64巻第2号 2017年2月 10代における妊娠中絶率の低下および
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目的 性に関する正しい知識の普及,エイズなどの性感染症予防,10代の望まない妊娠を回避するための避妊法等の啓発を目的として,釧路市では中学生と高校生を対象に,毎年,思春期保健講座を開催している。講座終了後のアンケート調査の経年集計から高校生における性意識や性行動の変化を探った。
方法 産婦人科医・泌尿器科医・小児科医・助産師等の専門の講師による「人工妊娠中絶」「性感染症」「避妊」「性の自己決定」などについての講義を行い,性意識や性行動,喫煙・飲酒に関するアンケートを実施した。分析対象は釧路市保健所管内の高等学校10~14校の1,2年生で,1,761~2,548名であった。平成13年から平成26年までの経年集計を行い,さらに「性交経験」に関係する要因について解析した。
結果 「性交経験」を有する者の割合は減少しており,平成13年には男子27.6%,女子34.8%であったが,平成26年は男子13.6%,女子16.2%となり,半減している。「初めての性交経験時に避妊を実行した者の割合」は70~80%程度で推移していたが,最近は女子においてその割合は減少している。「愛情のない性交渉を容認する者」は男子において高く,平成13年は35.5%に達していたが,平成26年は14.8%と半分以下に減少している。「自分の体を大切にしている者」は増加している。「性に関わる自分の行動・意識で影響を受けたもの」では「友人」と答える者が最も多かった。「インターネット」と答える者は特に男子において増加しており,平成15年は1.5%であったが,平成26年は17.3%であった。「学校の授業」と答える者も女子において増えており,平成16年は3.0%であったが,平成26年は10.6%と3倍以上に増加した。飲酒率と喫煙率は男女とも激減している。ロジスティック回帰分析の結果,「性交経験あり」と有意に関係する因子は,男子では「飲酒経験あり」,次いで「愛情のない性交渉を容認する」であった。女子では,「愛情のない性交渉を容認する」「飲酒経験あり」「学校の授業」「喫煙経験あり」であった。「学校の授業」は性交経験を抑制する因子であった。
結論 釧路市の思春期保健対策は着実に成果を上げており,高校生の性意識,性行動,喫煙・飲酒行動は大きく改善した。学校において避妊と性感染症の知識を徹底的に学ぶことと,喫煙・飲酒教育の重要性が改めて示唆された。
キーワード 妊娠中絶率,高校生,性交経験,性教育,飲酒,喫煙