論文
第64巻第2号 2017年2月 診療科別歯科医師の地域偏在-医師・歯科医師・薬剤師調査データを用いた分析-石丸 美穂(イシマル ミホ) 大野 幸子(オオノ サチコ) 松居 宏樹(マツイ ヒロキ)康永 秀生(ヤスナガ ヒデオ) 小池 創一(コイケ ソウイチ) |
目的 現在までわが国では,歯科医師の診療科別の地域偏在を考慮した研究は存在しない。今後の歯科医師の供給量を検討する上で診療科を考慮することは重要であると考えられるため,本研究では歯科医師の診療科別の地域偏在について明らかにすることを目的とした。
方法 1996年~2014年の医師・歯科医師・薬剤師調査の集計データを用いて,歯科診療科(一般歯科,矯正歯科,小児歯科,口腔外科)別に調査した。また広告可能な専門医(口腔外科,歯周病,歯科麻酔,小児歯科,歯科放射線)についても調査を行った。人口10万人対各診療科の歯科医師数を都道府県単位で求め,2004年と2014年で比較を行った。都道府県別・診療科別の歯科医師数の分布の偏在を調べるため,ローレンツ曲線を描きGini係数を求めた。
結果 各診療科で人口10万人対歯科医師数は2004年と2014年で有意に増加していた。診療科の中で最も都道府県による人数の差が大きかったのは小児歯科であり,小児歯科医師数が最も多い都道府県と最も少ない都道府県では,9倍の違いがあった。地域偏在の指標としてGini係数を用いた分析では,一般歯科,矯正歯科,小児歯科,口腔外科におけるGini係数は1996年から2014年の間で減少しており,歯科医師の地域偏在は改善傾向にあることが示唆された。専門医については2014年現在のGini係数は歯科放射線科専門医,歯科麻酔科専門医,小児歯科専門医,歯周病専門医,口腔外科専門医の順に高いことがわかった。
結論 各診療科の人口10万人対歯科医師数の増加に伴い,Gini係数はすべての診療科で減少していた。専門医については小児歯科専門医を除く専門医についてはGini係数が減少していた。
キーワード 歯科医師,歯科医療,歯科専門分野,専門職の地理的配置,需給,地域偏在