論文
第64巻第5号 2017年5月 韓国社会福祉大学生の海外介護就労意識趙 敏廷(チョウ ミンジョン) 谷川 和昭(タニカワ カズアキ) 成 耆玉(ソン キオク) |
目的 日本では介護人材の確保が急がれるなか,経済連携協定による外国人の介護就労に加えて留学生の活用や技能実習制度による外国人の受け入れが拡大される見通しである。こうした動向を踏まえ,本研究では韓国社会福祉大学生の海外介護就労意向および関連要因を検討し,日本の次代を担う外国人介護士受け入れの拡大を視野に入れた人材育成・確保に向けて示唆を得ることを目的とした。
方法 韓国のソウル特別市および京畿道に設置されている11カ所の4年制大学・2年制大学に在学している社会福祉大学生を対象に,調査票を用いて自記式調査を行った。質問項目は,基本属性,関連要因および海外介護就労意向に関する項目で構成した。分析データは,欠損値のない511票を用いた(有効回収率63.1%)。分析方法は,まず基礎集計を行い,次に,海外介護就労意向の有無により対象を2群に分け,χ2検定ならびにt検定を行い,引き続きロジスティック回帰分析を行った。
結果 その結果,韓国社会福祉大学生の海外介護就労意向については,次のようなことが明らかになった。①年齢が低い者の方が海外介護就労意向が高い,②4年制大学の学生の方が2年制の短大より海外介護就労意向が高い,③自分の子どもに介護の仕事を勧める者の方がしない者より海外介護就労意向が高い,④介護就労意向を有する者の方が海外介護就労意向が高い,⑤療養保護士の資格に対する関心がある者の方がより海外介護就労意向が高い。
結論 年齢が低い者の方が海外介護就労意向が高いという結果については,若年層の参入により介護現場が活性化されることが期待できる。また,介護に対する肯定的な視点に加え,高い学習能力を備えている可能性を持つ韓国社会福祉大学生は日本における介護人材として専門性を確保する上での教育・訓練にも積極的に取り組むことが考えられ,質の高い介護サービスの提供につながることが期待できる。さらに,優れた介護人材養成は,近い将来に高齢化問題に直面する韓国やアジア諸国に対し介護人材リーダー育成を通して国際社会への貢献につながると同時に,介護人材のグローバル化を後押しするものと考えられる。以上から,韓国社会福祉大学生が日本の介護人材として貢献できる可能性が示唆された。韓国の若者が日本で介護人材として活躍できるための支援策や条件を整備していくことは,日本にとって有用な方向といえる。また,介護福祉士養成施設においては,外国人留学生に対する教育・支援を考えていく上で有用な資料として役立つことが期待される。
キーワード 韓国,社会福祉大学生,海外就労意向,外国人,介護人材