論文
第64巻第6号 2017年6月 都道府県別にみた主たる家族介護者である
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目的 介護と就業の両立はわが国の喫緊の課題である。介護と就業についての状況を地域別に把握することは,両立を決定する要因を検証し,支援政策を考える上で重要だと思われるが,そうした先行研究は存在しない。そこで,本研究では,家族の介護を担うことが多く,一方で労働力としても期待される中高年女性を対象とし,都道府県別に,同居の主介護者である女性と主介護者以外の女性の就業および就業希望の状況を比較することとした。
方法 平成25年国民生活基礎調査の世帯票を用いた。中高年女性を対象とし,都道府県別に,同居の主介護者である女性と主介護者以外の女性の就業および就業希望の状況を集計し,図示した。
結果 主介護者である女性は主介護者以外の女性よりも就業している割合が低く,主介護者である女性の平均が57.8%であったのに対し,主介護者以外の女性の平均は66.9%であった。就業希望の割合は主介護者である女性の方が高く,主介護者である女性の平均が16.4%であったのに対し,主介護者以外の女性の平均は10.9%であった。主介護者である女性は主介護者以外の女性よりもすべての都道府県において就業している割合が低く,福井県以外の都道府県において就業希望の割合が高かった。就業していない人の中における就業希望の割合も,主介護者である女性のほうがおおむね高かった。主介護者である女性の就業および就業希望の状況には地域差がみられた。
結論 介護と就業を両立できる社会を目指すうえでは,就業希望がある介護者のニーズの実現が1つの課題である。地域の特性を考慮する必要もあると考えられる。
キーワード 国民生活基礎調査,家族介護者,女性,informal care,就業,就業希望