論文
第64巻第7号 2017年7月 地域在住高齢者における認知機能調査宮原 洋八(ミヤバラ ヒロヤ) 上城 憲司(カミジョウ ケンジ) 井上 忠俊(イノウエ タダトシ)田中 純子(タナカ ジュンコ) 納戸 美佐子(ノト ミサコ) 中村 貴志(ナカムラ タカシ) |
目的 地域在住高齢者のMMSE得点を性別に分類し年齢階級,教育年数別に検討することで,認知症に対する介入研究の基礎資料とすることを目的とした。
方法 佐賀県3町自治体の呼びかけで参加した65歳以上の高齢者698人が対象であった(平均年齢:男性75.7±5.8歳,女性78.3±5.2歳)。基本的属性には,年齢,性別,教育歴を聴取し,認知機能に関してMMSEを用いて調査を行った。
結果 年齢階級ごとのMMSE得点の平均値と標準偏差を男女別に示した結果,各年齢階級におけるMMSE得点は,男性では有意差は認められなかった。女性は65~69歳群と70~74歳群のMMSE得点が75~79歳群,80~84歳群,85歳以上群より有意に高かった。教育年数ごとのMMSE得点の平均値と標準偏差を男女別に示した結果,各教育年数におけるMMSE得点は,男性では9年以上群が6年以下群より有意に高かった。女性は9年以上群が6年以下群および7-8年群より有意に高かった。MMSE得点において28点以上を正常,24-27点をMCI,23点以下を認知症に分けた結果,MCI群の割合が男女とも3割あった。
結論 各年齢階級におけるMMSE得点は女性では年齢階級が上がるにつれて平均値は有意に低かった。男女ともに65~69歳群のMMSE得点平均値は27点代で85歳以上の平均値は25点でありその差は2点であった。他地域と比較すると明らかに年代差は小さかった。各教育年数におけるMMSE得点は男女とも教育年数が上がるにつれて平均値は有意に高かった。本研究においても,教育年数の低さがMMSE得点を低くした要因と推察される。認知機能を早期に調査し認知症を防止する手立てが必要であることが示唆された。
キーワード 地域高齢者,認知症,MMSE