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論文記事:先天代謝異常症児と家族の生活の医療社会面および健康関連QOLの実態 201707-06 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第64巻第7号 2017年7月

先天代謝異常症児と家族の生活の医療社会面
および健康関連QOLの実態

-質問紙調査より-
山口 慶子(ヤマグチ ケイコ) 涌水 理恵(ワキミズ リエ)
江守 陽子(エモリ ヨウコ) 窪田 満(クボタ ミツル)

目的 先天代謝異常症児と家族の生活の医療社会面と健康関連QOLの実態を明らかにし,今後関わっていく患児と家族への理解を深め,必要な支援の方向性の示唆を得ることである。

方法 先天代謝異常症患者登録制度Japan Registration System for Metabolic & Inherited Diseases(以下,JaSMIn)登録者のうち,調査時点において日本国内在住の7歳以上20歳以下の患児本人ときょうだい,および主たる養育者とその配偶者を対象とした無記名自己記入式質問紙調査を行った。調査期間は平成27年8~11月であった。質問項目は,対象者の生活の医療社会面(患児や家族の生活における疾患や治療に関すること)および健康関連QOLとした。健康関連QOLの測定は,患児およびきょうだいには子どもの健康関連QOLを測定する尺度KINDLを,主たる養育者および配偶者にはWHOQOL26を用いた。

結果 203家族より質問紙の返送が得られ,有効回答は201家族であった(有効回答率37.8%)。主たる養育者が回答した先天代謝異常症児の平均年齢は10.2歳であり,年齢分布は未就学児が3割,小学生が3割,中高生が3割,18〜20歳が1割であった。診断分類別に最も多かったのはアミノ酸代謝異常で3割,次いでライソゾーム病が2割,有機酸代謝異常が1割であった。約半数の患児が食事療法を受けており,酵素補充療法・栄養素補充を行っているのはそれぞれ15 %程度であった。主たる養育者の平均年齢は,42.2歳であり,約半数が専業主婦で,8割が子育て世代の30〜40代だった。主たる養育者の7割以上が同病の会に参加しており,QOL尺度の平均得点は3.1点であった。配偶者の平均年齢は,42.9歳であり,8割が30〜40代と働き盛りの世代の父親であった。主たる療育者同様に,9割の配偶者が児の療育に関する不安を抱いており,QOL尺度の平均得点は3.4点であった。患児本人が回答した平均年齢は,12.0歳で性別は男女半々であった。年齢分布は,小学生が約半数,中高生が4割,2名は18歳であった。患児のQOL尺度の平均得点は69.2点であった。きょうだいの平均年齢は,12.7歳で性別は3割が男児であった。6割のきょうだいが患児より年上であった。きょうだいのQOL尺度の平均得点は70.9点であった。

結論 本研究により,患児と主たる養育者のQOLは,既知集団と比べて低い傾向にあり,配偶者と患児のきょうだいのQOLは高い傾向にあるという実態が明らかになった。また,専門医以外の医療者への疾患・治療に関する知識普及が急務であり,ピアサポートを受けていない患児と家族をどのように支援していくか検討する必要があることが示唆された。

キーワード 先天代謝異常症,家族,QOL,医療社会面,ピアサポート

 

 

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