論文
第64巻第8号 2017年8月 在日韓国朝鮮人における肝がん死亡の推移大島 明(オオシマ アキラ) |
目的 在日韓国朝鮮人においては日本人および韓国に比して肝がん死亡が多いことが先行研究によって明らかにされている。しかし,2000年以降の在日韓国朝鮮人における肝がん死亡の推移に関しての報告はなされていない。そこで,公表された死亡データに基づき,1995年から2015年までの在日韓国朝鮮人における肝がん死亡の推移を調べるとともに,日本人および韓国における肝がん死亡の推移と比較してその要因について考察する。
方法 在日韓国朝鮮人における死亡データは,人口動態調査別表下巻日本における外国人,外国における日本人第1表死亡数(日本における外国人-国籍別,外国における日本人),性・死因(死因簡単分類)別から得た。そして,1995年,2000年,2005年,2010年,2015年の国勢調査による在日韓国朝鮮人の性別,5歳年齢階級別人口と各年における日本人における性別年齢階級別死亡率により肝がんを含む主要部位のがん等による死亡の期待値(E)を計算して実測値(O)との比O/Eにより標準化死亡比(Standardized Mortality Ratio, SMR)を算出した。一方,日本人の年齢調整肝がん死亡率(標準人口:世界人口)の推移のデータは国立がん研究センターがん情報サービス「統計」から,韓国の年齢調整肝がん死亡率の推移はWHOのCancer Mortality Databaseから得た。在日韓国朝鮮人における肝がんの年齢調整死亡率は便宜的に日本人の肝がん死亡率に上記の肝がんのSMRを掛け合わせて求めた。
結果 1995年から2015年における在日韓国朝鮮人の肝がんのSMRは,男では2.75~4.11,女でも2.45~3.40と,胃がん,大腸がん,肺がん,全がん,全死因のSMRに比して高かった。1995年から2015年にかけての肝がんの年齢調整死亡率は,在日韓国朝鮮人においても,日本人や韓国と同様に減少していた。
結論 在日韓国朝鮮人における肝がん死亡は,日本人や韓国に比して約3倍前後高いが,1995年以降日本人や韓国と同様に減少していた。
キーワード 在日韓国朝鮮人,肝がん死亡,B型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス