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論文記事:交通事故被害者と家族に対するソーシャルワークの現状と今後の支援のあり方 201708-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第64巻第8号 2017年8月

交通事故被害者と家族に対する
ソーシャルワークの現状と今後の支援のあり方

佐藤 舞(サトウ マイ)

目的 医療現場で対応する社会福祉士(以下,ソーシャルワーカー)は,被害者やその家族への支援,退院後の次なる支援者や支援機関につなぐことに対する不安や難しさなど,多くの問題を抱えている。その背景には,ソーシャルワーカー養成校において交通事故に対する援助技術習得のためのカリキュラムが義務づけられてはいないことなどが考えられるが明確でない。そこで病院に勤務するソーシャルワーカーへのアンケート調査の分析を通して,被害者に関わるソーシャルワーカーの抱える不安や問題点を明確にし,今後の医療福祉の養成校や講習会等における,交通事故被害者への関与についての教育の充実を図ることを目的とした。

方法 全国の地域医療支援病院,特定機能病院,回復期リハビリテーション病棟協会に登録されている病院,計1,450箇所に勤務するソーシャルワーカーを対象に,無記名自記式の質問調査を実施した。調査項目は,基本属性,交通事故関連のソーシャルワーク内容や連携をとった職種や機関,業務を遂行する上で感じている問題点や不安点,養成校での交通事故関連の学習経験の有無と今後の事前学習の希望を自由記載でデータを得た。自由記載の項目については,テキストデータをKJ法によりサブカテゴリーに分類し,さらにキー概念へ収斂した。

結果 交通事故被害者やその家族とのソーシャルワークで難しい・不安を感じていると回答した者は86.1%であり,「知識・経験不足」「社会資源の不足」「当事者の問題」「事故の複雑さ」が挙げられた。また養成校で交通事故関連の授業等がなかったと回答した者は,全体の89.7%であり,養成校で交通事故関連の授業等があった方がよいと回答した者は,全体の82.6%であった。具体的な内容に関しては「事例検討」「制度の学習」「心理的サポート方法の習得」などが挙げられた。

結論 交通事故被害者・家族に対する支援に対して,多くのソーシャルワーカーが不安や困難さを感じていることが改めて明らかとなった。交通事故のソーシャルワークは個別性が高く,社会保障制度の複雑さや社会資源が不足していることがさらに支援を複雑化させる原因であると考えられる。養成校での交通事故関連の授業に関しては,学生時代から社会保障制度の学習や事例検討を通しての交通事故被害の理解に取り組ませることで,より早期の生活支援や社会復帰することにつながると考える。

キーワード 交通事故,交通事故被害者,家族,ソーシャルワーカー,退院支援,教育の充実

 

 

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