論文
第64巻第11号 2017年9月 年齢調整された,および年齢構成のみで変動させた
神山 吉輝(カミヤマ ヨシキ) |
目的 近年の日本の人口1人当たり国民医療費の推移に対する人口の年齢構成の変動およびそれ以外の要因の影響をわかりやすい形で示すことを目的とした。
方法 5歳階級幅の年齢階級別でデータが公表されている平成10~26年度の人口1人当たり国民医療費を用い,平成10年の年齢階級別の総人口を基準人口として,平成10~26年度の年齢調整された人口1人当たり医療費(以下,年齢調整1人当たり医療費)を算出した。また,平成10年度の年齢階級別の1人当たり医療費と平成10~26年の年齢階級別の総人口を用いて,人口の年齢構成の変化のみで変動させた平成10~26年度の人口1人当たり医療費を算出した。平成20~26年度においても同様の算出を行った。また,同期間については,男女別にも算出を行った。
結果 平成10~26年度の1人当たり国民医療費,年齢調整1人当たり医療費,年齢構成のみで変化させた1人当たり国民医療費の期間中の増加はそれぞれ,37.3%,9.1%,31.2%であった。年齢調整1人当たり医療費は,平成18年度までは微減傾向を示し,19年度以降は増加に転じていることが示された。一方,1人当たり国民医療費と年齢構成のみで変化させた1人当たり国民医療費とは,グラフ上でその推移がおおむね一致していた。また,平成20~26年度の1人当たり国民医療費,年齢調整1人当たり医療費,年齢構成のみで変化させた1人当たり国民医療費の期間中の増加は,それぞれ17.8%,9.1%,8.1%であった。また,同期間の男女別では,男性で17.8%,8.7%,8.6%,女性で17.8%,9.4%,7.7%であった。
考察 年齢調整1人当たり医療費が,平成18年度までは微減傾向を示したのは,介護保険制度の導入や診療報酬の引き下げ等の制度の変更のためだと考えられた。平成10~26年度で,1人当たり国民医療費と年齢構成のみで変化させた1人当たり国民医療費との推移がおおむね一致していたのも同様の理由からだと考えられた。一方,平成20~26年度では,年齢調整1人当たり医療費の増加がより明瞭に認められ,1人当たり国民医療費と年齢構成のみで変化させた1人当たり国民医療費との推移は乖離していた。それぞれの期間において,年齢構成の変化以外の要因や年齢構成の変化がどの程度医療費の変化に影響しているのかをわかりやすく示すことができたと考えられる。
キーワード 医療費,国民医療費,人口1人当たり国民医療費,年齢調整,年齢構成,高齢化