論文
第64巻第12号 2017年10月 レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)における
野田 龍也(ノダ タツヤ) 久保 慎一郎(クボ シンイチロウ) 明神 大也(ミョウジン トモヤ) |
目的 レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下,NDB)とは,わが国における保険診療の悉皆データである。NDBには,同一患者の複数レセプトを紐付ける変数として,「ID1」と「ID2」が用意されているが,就職・転職や氏名の表記ゆれ等で容易に変わり得る。本研究は,NDBにおける現行の名寄せ手法を改善し,種々の工夫により名寄せの効率を高めた新たな個人ID(ID0)を提案するとともに,その妥当性を検証することを目的としている。
方法 平成25年4月~平成26年3月の医科入院レセプト,医科入院外レセプト,DPCレセプト,調剤レセプト全体を対象とし,ID1,ID2,診療年月,転帰区分を利用した新しい名寄せアルゴリズムを開発した。アルゴリズムの妥当性を検証するため,従来のID1による名寄せとID0による名寄せを,平成25年10月1日時点の推計人口と比較した。
結果 男女とも,ID0による性年齢階級別患者数はID1による患者数を下回っており,ID1による患者数を男性で6.2%,女性で7.1%,圧縮することができた。ID1により名寄せされた患者数は,小児や高齢者,若年女性において推計人口を大きく上回っていたが,ID0により名寄せされた患者数はおおむね推計人口の範囲内に収まった。
結論 本研究で提案した新たな名寄せID(ID0)は,従来の名寄せで用いられてきたID1や,ID1とID2の併用に比し,名寄せの精度が向上した。現状ではID0が最善の名寄せ手法であり,今後,患者数の推計にはID1ではなくID0を用いることが望ましい。
キーワード NDB,レセプト,診療報酬データ,名寄せ,突合,データベース