論文
第64巻第13号 2017年11月 高齢ボランティアによる介護予防体操の
小澤 多賀子(コザワ タカコ) 田中 喜代次(タナカ キヨジ) 栗盛 須雅子(クリモリ スガコ) |
目的 人口減少・少子高齢化が進展するわが国では,団塊の世代が75歳以上となる平成37年を見据えて,地域包括ケアシステムの構築が喫緊の課題とされている。介護予防の充実に向けては,住民同士の支え合い(互助)による取り組みが希求されており,住民ボランティアによる体操などの通いの場づくりの醸成が期待されている。しかしながら,住民ボランティアによる体操などの通いの場づくりが,地域の介護予防へ及ぼす効果を検討した報告は少ない。そこで,本研究では市町村における高齢のボランティアによる介護予防体操普及活動と軽度の要介護認定者(要支援1・2および要介護1)の割合および介護保険料との関係を明らかにすることを目的とした。具体的には,高齢のボランティアが担う介護予防体操教室の開催実績と軽度の要介護認定者の割合の増減および介護保険料との間に関係がみられるかについて検討した。
方法 茨城県では平成17年からシルバーリハビリ体操指導士養成事業を開始し,地域在住高齢者へ介護予防体操を普及する高齢のボランティアを養成している。本研究の対象は,本事業を展開する茨城県内の全44市町村とした。分析に用いたデータは,市町村ごとの体操教室開催実績として事業開始10年経過時(平成17~26年度の総数)における高齢者人口1,000人(要介護4・5を除く)あたりの教室延べ開催数および住民参加延べ人数,地域の要介護認定状況として9年間(平成18~26年度)の軽度および重度(要介護2~5)の要介護認定者の割合の増減,介護保険料(第6期(平成27~29年度)第一号保険料),平成26年度の高齢化率とした。分析は,市町村ごとの体操教室開催実績と軽度の要介護認定者の割合の増減および介護保険料との関連について,Pearsonの相関係数により検討した。
結果 44市町村において,軽度の要介護認定者の割合の増減については,住民参加延べ人数(r=-0.30,P=0.048)と,介護保険料については,教室延べ開催数(r=-0.32,P=0.032)および住民参加延べ人数(r=-0.36,P=0.016)と,有意な負の相関がみられた。
結論 本研究の結果から,高齢のボランティアによる介護予防体操普及活動は,軽度の要介護認定者の割合および介護保険料の増加抑制に対して有用である可能性が示唆された。
キーワード 介護予防,高齢のボランティア,体操普及活動,軽度の要介護認定者の割合,介護保険料