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論文記事:社会福祉士後見人の成年被後見人に対する権利擁護に関する研究 201711-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第64巻第13号 2017年11月

社会福祉士後見人の成年被後見人に対する
権利擁護に関する研究

-後見業務の分析を通じて-
林田 哲弥(ハヤシダ テツヤ) 佐藤 ゆかり(サトウ ユカリ) 香川 幸次郎(カガワ コウジロウ)

目的 成年後見制度が創設されてから17年目を迎え,その重要性は益々高まってきているが,実際の現場で成年被後見人に対して行われている後見業務内容や,その重要性の実態については明らかになっていない。そこで,社会福祉士後見人に焦点をあて,後見業務の重要性と構造を解明し,成年被後見人に対する支援の方向性を検討する。

方法 予備調査では「社会福祉士後見人の成年被後見人に対する後見業務の重要度調査」の質問項目案を作成するため,アイテムプールの作業を行い,全50項目の質問項目案を作成した。次に本調査では予備調査で作成した調査項目を用い,公益社団法人日本社会福祉士会ホームページ上の独立型社会福祉士名簿登録者一覧402名のうち,住所,氏名が公開されており郵送可能な301名に対して郵送調査を行った。回収されたデータは因子分析を行い,因子抽出には重み付けのない最小2乗法とプロマックス回転を用いた。

結果 送付者301名のうち,188名より返信があり(回収割合62.5%),そのうち,分析対象は回答に欠損を有するもの,回答選択がすべて同一のものを除いた137名の回答とした。因子分析の結果,5因子が抽出され重要度が高い順に,「財産管理と身上監護」「ソーシャルワーク技術を活かした支援」「法的事案に対する支援」「本人の意向尊重」「法的権限を越えた支援」と命名した。

結論 成年被後見人に対する後見業務において,重要性という観点から分析した結果,5つの因子で構成されていることが確認できた。「財産管理と身上監護」と「ソーシャルワーク技術を活かした支援」は因子間の多重比較の結果,有意な差は認められず並列の関係にあり,中心となる因子である。「法的事案に対する支援」は,因子として独立しながらも「財産管理と身上監護」と「ソーシャルワーク技術を活かした支援」の2つの因子に関連性を持つものであり,「本人の意向尊重」は,後見業務全体を覆い,すべての因子に関与するものである。「法的権限を越えた支援」は,法への規定もなく成年後見人は権限を持たないため,他の因子とは少し離れた位置づけであると考えた。また,専有性有無の観点から5因子を検討した結果,前者は法的な支援であり,後者は社会福祉的な支援であることが確認された。成年被後見人への「あるべき支援」を検討する際には,社会福祉的な支援の必要性についても十分考慮されるべきである。

キーワード 成年後見制度,権利擁護,社会福祉士後見人,成年被後見人,後見業務,因子分析

 

 

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