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論文記事:保育ソーシャルワークの構成概念と尺度開発 201712-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第64巻第15号 2017年12月

保育ソーシャルワークの構成概念と尺度開発

-保育士や保育所の実践環境に着目して-
山城 久弥(ヤマシロ ヒサヤ)

目的 今日,少子化や核家族化の進行,地域とのつながりの希薄化などの大きな社会変化を背景に,児童やその家庭を取り巻く環境が厳しい状況の中,保育士や保育所は地域やその家庭の子育て支援を担うためにソーシャルワーク機能を果たすことが求められている。そこで,本研究では,保育士個人として必要な支援スキルだけでなく,保育所組織としての実践環境に着目した保育ソーシャルワークの構成概念を明らかにし,実践環境をアセスメントするための尺度を開発することを目的とした。

方法 2017年2月15日~3月31日にかけて調査を実施した。先行研究から,保育ソーシャルワークに関する40項目の質問項目を採用し,長野県保育園連盟保育部会に所属する保育園に在籍している保育士480名を対象に郵送留置調査法を実施し,回収数は350名(回収率72.9%)であった。その中から,保育ソーシャルワークに関する項目において,無回答数が全体の5%以下(2項目以下)の346名を分析対象者とした。分析方法として,保育ソーシャルワークの項目に対し探索的因子分析を行った。信頼性については,内的整合性(Cronbachのα係数)を算出した。

結果 保育ソーシャルワークの探索的因子分析の結果,「権利侵害の知識とその対応方法」「子育て支援のための知識と活動」「家庭・保護者との援助関係」「支援の限界と専門機関との連携の理解」「保育所内における情報共有」「保育所内における職員の連携」の6つの下位尺度から構成された。各下位尺度のα係数は0.61~0.85であり,6因子構造が示された。さらに,6つの下位尺度を構成する項目が同一因子に0.4以上の因子負荷量を有し,構成概念の妥当性をある程度確保していることも示唆された。

結論 本研究において抽出された因子は,先行研究から得られた理論的構造とほぼ一致しており,ある程度の信頼性と妥当性が確認された。とくに,専門機関との連携においては,その認識として保育士や保育所の支援の限界を理解することに相関がみられ,連携のあり方についての示唆が得られた。今後の課題としては,尺度の改良を重ね,さらなる信頼性と妥当性の確保や実際の保育現場で活用されるよう実用化のためのツール開発もあわせて行っていく必要がある。

キーワード 保育ソーシャルワーク,実践環境,構成概念,保育士,保育所

 

 

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