論文
第65巻第1号 2018年1月 自治体における母子健康手帳と綴込型松井式便色カードの
顧 艶紅(コ エンコウ) 大森 豊緑(オオモリ トヨノリ) 松井 陽(マツイ アキラ) |
目的 2012年度から松井式便色カード(以下,便色カード)が母子健康手帳に綴じ込まれており,各自治体からの交付により,胆道閉鎖症のスクリーニングとして活用されている。便色カードによるスクリーニングは先天性代謝異常症等のマススクリーニング検査と異なり,行政による保護者・医療関係者への周知とカードの色調精度管理がその効果を大きく左右するため,厚生労働省通知で使用法・交付と説明や色調精度管理に関する技術的助言等が示されている。今回,母子健康手帳と便色カードの印刷および交付・説明の状況を把握するため,導入後初めての全国調査を行った。
方法 都道府県を通して,2015年10月末現在で全国の1,741自治体へ調査票を送付し,横断調査を行った。
結果 調査票の回収率は80.6%(1,404),母子健康手帳見本の回収率は65.9%(1,148)であった。現在使用している母子健康手帳について1,303自治体は計21の業者から購入し,97自治体は計23の印刷業者で独自に印刷していた。便色カード印刷可能業者リストに掲載されている業者が印刷した手帳を購入または印刷を依頼した自治体は1,016であった。また,35の自治体が競争入札によって毎年購入先や印刷業者を替えていた。一つの自治体を除き,母子健康手帳と便色カードの購入先や印刷業者は同一であった。また,母子健康手帳の省令様式内に綴じ込まれていない,あるいは規格外の用紙に印刷されている便色カードもあった。なお,上述の厚生労働省通知について,「知っている」と答えた自治体は80.5%(1,098/1,364)であった。718の自治体が市町村役場の窓口で母子健康手帳を交付しており,交付時に母子健康手帳と便色カードについて説明していたのはそれぞれ85.2%と42.1%であった。支所・出張所で母子健康手帳を交付していたのは358自治体で,交付時に説明していたのはそれぞれ61.5%と27.9%であった。保健所・保健センターで母子健康手帳を交付していたのは877自治体で,交付時に説明していたのはそれぞれ97.3%と57.8%であった。また児童館や公民館などその他の施設で交付していたのは70自治体で,交付時(新生児・乳児訪問時を含む)に説明していたのはそれぞれ82.9%と78.6%であった。
結論 便色カードによる胆道閉鎖症のスクリーニングの効果を上げるため,印刷可能業者リストに掲載されていない業者で印刷されたカードの精度管理を図るとともに,母子健康手帳の交付時に便色カード使用法についての説明を行うことを周知徹底する必要がある。
キーワード 母子健康手帳,自治体,松井式便色カード,精度管理,マススクリーニング