論文
第65巻第2号 2018年2月 高校におけるヤングケアラーの割合とケアの状況-大阪府下の公立高校の生徒を対象とした質問紙調査の結果より-濱島 淑恵(ハマシマ ヨシエ) 宮川 雅充(ミヤカワ マサミツ) |
目的 日本におけるヤングケアラーの実態把握は,諸外国と比較して,遅れているのが現状である。本研究では,高校におけるヤングケアラーの実態を,高校生自身の主訴,認識に基づいて把握することを目的とした。
方法 2016年1~12月に,大阪府下の公立高校において,生徒を対象とした質問紙調査を実施した。
結果 10校の協力を得ることができ,合計で5,671票の調査票が回収された。そのうち,本研究の分析対象は,5,246票となった。別居している家族も含め,家族にケアを必要としている人がいるかを尋ねた結果,5,246名のうち664名(12.7%)がいると回答していた。さらに,325名(6.2%)が,回答者自身がケアをしていると回答していた。なお,そのうち,53名は,幼いきょうだいがいるためという理由のみでケアをしていた。325名から,この53名を除外した結果,272名がヤングケアラーと考えられ,その割合は5.2%であった。ケアの内容に関する回答結果からは,高校生のヤングケアラーは,ケアを要する家族に,直接,身体的なケアを行っている場合もあるが,家事を担う,年下のきょうだいの世話をする,感情面でのサポートをする,特定の場面で力仕事や外出時の介助・付き添いをするといったケア役割が回ってきやすいことが示唆された。また,ケアの期間については,中央値が3年0カ月,75パーセンタイルが6年5カ月であり,ケア役割が常態化,長期化しつつあるケースが一定数存在することが示唆された。ケアの頻度,1日のケア時間に注目して,負担がより大きいと考えられるヤングケアラーの割合を求めた結果,週4,5日以上ケアをしている者は2.3%,学校がある日に1日2時間以上のケアをしている者は1.2%,学校がない日に1日4時間以上のケアをしている者は1.2%,学校がある日に1日2時間以上,かつ,学校がない日に1日4時間以上のケアをしている者は1.0%存在すると考えられた。
結論 日本の高校においても,ヤングケアラーは存在し,負担が大きいと考えられるケースもそこには含まれていることが示された。また,彼らの担うケアの特徴から,その存在は潜在化しやすいことが示唆された。家庭内でのケア役割を担うことが彼らに過度な負担を強い,将来の可能性を狭める経験とならないように,ヤングケアラーの支援体制を社会的に構築する必要があると考えられる。
キーワード ヤングケアラー,若年介護者,介護者支援,家族支援,高校生,質問紙調査