論文
第65巻第3号 2018年3月 訪問・通所リハビリテーション利用者の
曽根 稔雅(ソネ トシマサ) 中谷 直樹(ナカヤ ナオキ) 遠又 靖丈(トオマタ ヤスタケ) |
目的 本研究の目的は,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)利用者と通所リハビリテーション(以下,通所リハ)利用者における特性や課題の違いを明らかにすることに加え,それぞれの利用者が抱えている課題を要介護度別に分析することである。
方法 本研究の対象者として,各事業所に勤務するリハビリテーション(以下,リハ)担当者1名当たり1名の利用者の抽出を依頼し,訪問リハは2016年1月1日時点,通所リハは2015年10月1日時点での調査を実施した。調査項目は,利用者の特性,ケアマネジャーが考える解決すべき課題,リハ計画書の作成者が設定した日常生活上の課題であった。利用者の特性と課題について,訪問リハ利用者と通所リハ利用者との差を検討するため対応のないt検定およびχ2検定を実施した。また,要介護度別の傾向性を検討するためCochran-Armitage検定を実施した。
結果 訪問リハでは1,266事業所の利用者3,989名,通所リハでは467事業所の利用者1,840名から回答を得た。利用者の特性として,訪問リハ利用者は,通所リハ利用者より要介護度が重度の者,日常生活自立度の低い者が多かった。課題として,訪問リハ利用者は,起居動作やADLにおける身辺動作,介護負担軽減,買い物,余暇活動の課題が多く,通所リハ利用者は,歩行・移動,閉じこもり予防,社会的参加支援の課題が多かった。要介護度別に検討した結果,訪問リハ利用者と通所リハ利用者共通の課題として,要介護度が重度になるほど,ADLや介護負担軽減の課題が多く,IADL維持・向上,社会的参加支援の課題が少ないことが示された。また,筋力向上,筋持久力向上,歩行・移動,階段昇降,閉じこもり予防の課題は,訪問リハ利用者で要介護度が重度になるほど少なくなるのに対し,通所リハ利用者では要介護度における違いは示されなかった。さらに,身体機能に関する課題は,活動や社会参加に関する課題より多いことが示された。
結論 訪問リハは利用者の生活環境で実施されること,通所リハは機器が整備され,他の利用者との関わりを通じた支援ができる環境にあることから,それぞれの特性が活かされた形で課題が挙げられていた。また,身体機能に関する課題は依然として多いことが示され,高齢者個々人のQOLの向上を目指すためには,さらに活動や社会参加に関する課題に目を向けていく必要があると考える。これら課題の特徴を踏まえることは,利用者の居宅サービスにおけるリハの均てん化に向けた重要な視点になるものと思われる。
キーワード 訪問リハビリテーション,通所リハビリテーション,実態調査