論文
第65巻第4号 2018年4月 静岡県が設定する健康づくりの新三要素(運動・栄養・社会参加)
久保田 晃生(クボタ アキオ) 岡本 尚己(オカモト ナオキ) 野中 佑紀(ノナカ ユウキ) |
目的 運動と栄養の指導に加え,社会参加の指導および実践の場面を意図的に取り入れた教室を考案し,健康づくり,介護予防関連の評価指標への効果を介入研究で検証した。
方法 非無作為割付による並行群間比較試験である。静岡県下田市の65歳以上の高齢者で,地域包括支援センターの協力で研究参加者を募り,介入群21人(76.2±4.7歳),対照群24人(78.0±4.7歳)で実施した。介入群には運動,栄養,社会参加を取り入れた教室(以下,教室)を実施した。全14回で1・14回目は,効果を評価する測定会を行った。測定会では運動面(5m最大歩行時間,開眼片足立ち,握力,下肢筋力,Timed Up & Go,運動自己チェック),栄養面(食生活自己チェック),社会参加面(社会関連性指標,社会参加自己チェック)を測定した。2回目から13回目は,運動は毎回,栄養と社会参加は隔週で指導および実践を取り入れた。なお,運動は,自体重を用いた筋力トレーニングや体操を実施した。栄養は,塩分摂取に重点を置き指導した。社会参加は,社会参加活動の情報提供と,グループ活動を行った。グループは,3~4人程度で3つの課題(ウォーキングマップの作成,健康づくり・介護予防のチラシづくり,グループ体操の作成)に取り組んだ。対照群は,介入群の測定会のみ同様に行った。介入効果の検証は,時点と群の2要因による反復測定の分散分析を実施し,2要因間の交互作用を検討した。また,対応のあるt検定で群内比較を施した。
結果 介入群では運動面の開眼片足立ち,Timed Up & Go,栄養面の食生活自己チェック,社会参加面の社会参加自己チェックで,群内の有意差(p<0.05)が認められた。一方,対照群では,運動面の開眼片足立ち,Timed Up & Goで,群内の有意差(p<0.05)が認められた。いずれも好ましい変化を示した。2要因による反復測定の分散分析を実施したが有意な交互作用は認められなかった。
結論 本研究は社会参加を強調した新たな健康づくり教室であったが,実施上の課題も多く,交互作用は認められず介入効果を強く支持できないこともあり,評価指標や内容の改善が必要である。
キーワード 運動,栄養,社会参加,健康づくり教室