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論文記事:個人および地域レベルにおける要介護リスク指標とソーシャルキャピタル指標の関連の違い 201804-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第65巻第4号 2018年4月

個人および地域レベルにおける要介護リスク指標と
ソーシャルキャピタル指標の関連の違い

-JAGES2010横断研究-
井手 一茂(イデ カズシゲ) 宮國 康弘(ミヤグニ ヤスヒロ)
中村 恒穂(ナカムラ ツネオ) 近藤 克則(コンドウ カツノリ)

目的 地域づくりによる介護予防を推進する上で地域診断が重要とされ,ソーシャルキャピタル(Social Capital,以下,SC)が注目されている。地域診断指標の課題に生態学的錯誤(地域レベルの変数間の関連から個人レベルの関連を誤って推論),個人主義的錯誤(個人レベルの変数間の関連から地域レベルの関連を誤って推論)が挙げられる。地域診断に用いるSC指標にはこの両者がないことが望ましい。本研究の目的は,個人・地域の両レベルにおいて2つの錯誤がない要介護リスクと関連を示すSC指標を抽出することを目的とした。

方法 本研究は,日本老年学的評価研究(JAGES)2010に参加した25保険者31市町村の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者98,744名を分析対象とした。個人レベルのロジスティック回帰分析(有意水準5%)の目的変数には,基本チェックリストの要介護リスク指標である生活機能低下,フレイル,運動機能低下,低栄養,口腔機能低下,閉じこもり,認知機能低下,うつの8指標を使用した。説明変数は,SC指標(社会的サポート,社会参加,社会的ネットワーク,SaitoのSC指標)の頻度別35指標(280モデル)とした。調整変数は,年齢,性別,教育歴,等価所得,疾病の有無,主観的健康感,婚姻状態,家族構成とした。地域レベルの分析単位は校区とし,Spearmanの順位相関分析(有意水準5%)を実施した。変数は個人レベルと同様とし,年齢(前期・後期高齢者)による層別化を実施し,1校区あたり30名以上の前期349校区,後期287校区を分析対象とした。

結果 個人レベルではSC指標が高いほど要介護リスク全8指標が有意に低い保護的な関連が28/35指標(80.0%)でみられた。しかし,地域レベルではSC指標が高いほど要介護リスクが高い非保護的な関連が20/35指標(57.1%)で1つ以上みられた。生態学・個人主義的錯誤がなく,要介護リスクに保護的なSC指標は,社会的サポート,社会参加のうち,ボランティア(週1回,月1~2回),スポーツ・趣味(週1回,月1~2回,年数回),就労ありとSaitoのSC指標(社会参加,連帯感)の15/35指標(42.9%)に留まった。

結論 生態学・個人主義的錯誤は20/35指標(57.1%)でみられ,2つの錯誤がなく要介護リスク抑制を示唆する地域診断指標は,社会的サポートやボランティア・趣味・スポーツ・就労など一部(42.9%)のSC指標に留まった。

キーワード ソーシャルキャピタル,介護予防,地域づくり,地域診断,生態学的錯誤,個人主義的錯誤

 

 

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